情熱大陸 米津玄師が初めて踊りを披露した「LOSER」や「パプリカ」の振付をした、辻本知彦(ダンサー・振付師)とは?

2020年9月20日放映の「情熱大陸」は、辻本知彦(ダンサー・振付師)。

米津玄師に「聖なる獣」と慕われ、彼が初めて踊りを披露した「LOSER」や「パプリカ」の振付師として、その名を知られています。

辻本の振り付けの特徴は、踊り手ひとりひとりとじっくり向き合い、その踊り手を深く理解した上で、その人に合った振付を生み出していくアプローチを取っていくことで、踊り手本人すら気づかない、新たな魅力を引き出すところにあります。

辻本は、もともと圧倒的な存在感を放つダンサーであるが、今、仕事の大半が振り付けで、自ら踊る機会が少なくなってきています。

そんな中、コロナ渦でエンターテインメントの披露の場が減ってきている今年8月に、森山未來らとともに2010年に立ち上げたパフォーマンスユニット「きゅうかくうしお」で、新たなパフォーマンスを企画したといいます。

どんな企画なのでしょうか?

情熱大陸 辻本知彦(ダンサー・振付師)のプロフィール

辻本 知彦(つじもと ともひこ)は、大阪府吹田市に、4人兄弟の末っ子として1977年に生まれています。(辻本の“辻”は、しんにょう(点1つ)です)

18歳でダンスを始めます。

プロを目指すには、遅すぎるスタートだったのですが、2年で倍率100倍ともいわれるディズニーのダンサーになっています。

この時点で、かなりすごいのですが、まだまだ彼のすごさは続きます。

2004年より、金森穣主宰のダンス・カンパニーNoism04創立時期メンバーとして所属しています。

2007年には、世界中から高く評価されている、エンターテインメント集団、シルク・ドゥ・ソレイユに日本人男性ダンサーとして、初めて起用されています。

あの、人間の持てる能力の限界まで追求したパフォーマンスや、あらゆる芸術を融合させた芸術性の高さで有名なシルク・ドゥ・ソレイユで活躍するなんて、才能はもちろんですが、ものすごく努力したのではないかと思います。

また、2011年から2014年には、『Michael Jackson The Immortal World Tour』の27カ国485公演にも参加していて、彼の実力の高さが伺われます。

辻本は、ストリートダンスをやりながら、クラシックバレエにも真剣に取り組んだ、出色のコンテンポラリーダンサーです。

両方に取り組んでいた辻本は、当時ストリート仲間から奇異な目で見られたこともあったそうです。

しかし、それが、辻本ならではの動きの幅となっているといいます。

辻本は、ダンスについて、こんな風に言っています。

「すごく悩んで、すごく考えるけれども、基本的には、感覚でダンスをやりたい、全部感覚で本能的にやっていきたいと思っている」

そして彼は、自ら踊るだけでなく、振付師としても、MV、CMや舞台、ツアーの振付などで活躍し、今やひっぱりだこな状態です。

何でもチャレンジする、辻本の姿勢はどんなところからくるのでしょうか?

番組内で、彼は、「全てが、ダンスが上手くなりたいが為にやっていることに繋がる」と言っていました。

そこまで彼を虜にしているダンスの世界。

世界的ダンサー、菅原小春(すがわら こはる)は、辻本の全てが“好き”だと言います。
「私以上にダンスを考えている人というか、感じている人。ダンスしかないって言う、すごい人がいるんだなーって思わせてくれる人に会うと、自分は何でもないんだなぁとか、まだまだなんだなぁって思える。それによって、人生のワクワク度が増すんです。もう毎日楽しくてしょうがないですよ」

この言葉に、ダンス音痴の私には伺いしれない、ダンスの魅力が、きっとあるに違いない!と無条件に思いました。


情熱大陸 辻本知彦(ダンサー・振付師)の振付の魅力はどんなところ?

気温35度の酷暑の中、陰になる場所のない屋上の炎天下で、「風邪薬 ストナ」のCM撮影が行われていました。

辻本が、振付を行ったのは、フィギアスケーターの浅田真央。

辻本は、手をつくこともできないほどに熱せられたい屋上の石の上で踊る、浅田の気持ちにも気を遣います。

動きを指導しながらも、自ら傘を持ち、浅田を日差しから守っていました。

そして、本番では、自分の振り付けが上手く表現されているかよりも、演者が気持ちよく表現しているかに、注視していました。

浅田が、両腕を一直線に開いて演じている場面で、「直線に開くよりも、曲線の方が、腕が長く見えるから、アームスをしならせるようにしたほうが良い」と、辻本は、追加でアドバイスを伝えます。

自分がもし演者であれば、自分に寄り添って、より美しく見える動きを指導されたのならば、気持ちも乗って、より良く演じることができますよね。

瀬戸内を拠点にするアイドルグループ、STU48の「思い出せる恋をしよう」の歌の振り付けも、辻本が担当していました。

STU48は、まだ知名度が高いとは言えないグループです。

その為、グループメンバーの顔と名前はまだ知られてなくて、覚えるのも一苦労です。

辻本は、単語帳にメンバーの一人一人の写真を貼り、名前(愛称)を書き入れて、いつでも確認ができるようにしていました。

辻本は言います。
「振り付けは、売れさせることですよね。僕らの目的はそれですから。結局、ダンスを使って、歌を使って、彼らが人々に知られて、勇気とパワーをあげていくことですよ。これからです。だからこそ楽しいんですよね」

グループメンバーそれぞれの個性を輝かせるためのポイントを、個別にアドバイスを入れていきます。

辻本がこの振り付けで目指したのは、“元気さとカワイらしさ”と“一目で印象に残る動き”。

STU48は、このパフォーマンスで、どんな印象を見る人に与えることになるのでしょうか?

情熱大陸 辻本知彦(ダンサー・振付師)にとってのダンスとは?

辻本は、ニューヨークに行った時に、あまりのレベルの高さに圧倒され、自分のポテンシャルでは、世界で1番にはなることはできないと感じたと言います。

“自分”と言うジャンルを作らないと、世界で1番にはなることはできないと痛感したそうです。

以来、人と違うことを探し、努力を重ねて“辻本知彦”というオリジナリティーを追い求めてきました。

彼は、世界で一番になることを目指して、ダンスが上手くなるために、さまざまに取り組みを続けてきたんですね。

辻本は、母校の大阪ダンス&アクターズ専門学校で、年に数回、ワークショップを開いています。

ダンスを学ぶ後輩たちに、辻本が感じた世界の壁、オリジナリティーの大切さを伝えているのです。「自分にしか踊れない、もしくは自分はこれが好きだって言うダンスを見つける、探すアシストをしたいなと思っています」

後輩たちに、自由に自分なりに踊ってみて、とリクエストしますが、オリジナリティーのあるダンスをする生徒は見当たりません。

辻本は、言います。

「無茶苦茶なダンスを作りなさい。それをやったら怒られるとか、これってダンスなのかなぁっていうのを(むしろ)やってみて。シルクで、8000人の中の20人に(選ばれた)なったときの話をしましょう。

絶対何やって踊っても無理。うまい人が多いから。踊ってくださいって言われた時に、周りを見て違うことをしよう、とただこれだけでいい。ぱっと周りを見るじゃない?ここで1番目立つようにするには、どうしたらいいかということしか考えない。
(例えば)じゃあ僕は「ドン、ドン」と声を出して、飛んでみようと思って、やってみる。
他の人が、声を出すことがタブーだと思っているんだったら、あえて出す。そうすると、この人は全然違う発想を持っている人なんだ、というアピールになる」

辻本は、ダンスで生きていこうと励む後輩たちに対し、きれい事は言いません。

テーマパークで働きたいと語る後輩には、身長が低いとそれが壁になることもあるけれと、まずは技術がないといけない、届かない夢ではないから、頑張るようにとエールを送ります。

ミュージカルを目指す後輩には、ミュージカルは歌がメインだから、歌をもっと頑張るようにとアドバイスを伝えます。

誰かの後ろで踊るのではなく、自分がメインで踊りたいという後輩には、誰のようになりたいのか、その人のようになれるようなトレーニングをしているのか、努力をして、色々と考えたりしながら、人生をワクワクと生きているのであれば、目指す人のようになれるかもしれないと思うけれど、今の状態では、なれるはずはないよと、はっきりと伝えていました。

何かスゴイことにコミットして、努力した結果が、目指したものとは違うものになっていたとしても、同じレベルの違う頂上に立つことはできると、辻本は言っていました。

努力し、結果をだしながらも、高い目標を目指して努力をし続けている人の、本当の言葉だな、と感じます。

辻本は、今自分が取り組んでいる事は、一生やっていけるかということを、いつも問いかけていると言います。


情熱大陸 辻本知彦(ダンサー・振付師)が考える、ダンスの未来につながるパフォーマンスとは、どんなこと?

2020年8月、辻本は、森山未來と立ち上げたパフォーマンスユニット「きゅうかくうしお」のメンバーと、南房総で、山を開墾していました。

コロナ渦で、舞台芸術が窮地にある中、辻本たちは、野山に表現の場を求めるという、新たな試みに取り組んでいました。

監督や照明、音響、衣装など舞台仲間で作った「きゅうかくうしお」が、舞台芸術の未来を切り開こうとしていたのです。

辻本は、仕事の大半を振り付けが占める今も、踊り子としての心は忘れてはいません。
「何かしら未来につながるパフォーマンスを探っていて、これからは劇場でやることだけがパフォーマンスではないと思うんですよね。僕らはもともと舞台人ですから、空間というか場所があれば、どういうパフォーマンスができるか、というのはずっと考えているのだと思う」

森山も辻本の姿勢に共感しています。
「踊りの美しさとか魅力とかは、結局答えが出ないので、その中で彼なりの理屈とかを正確に言葉にしようとする、身体に出そうとする作業が、僕はとても美しいと思っている。彼の踊りが好きなので、楽しみにしているっていう感じかな」

前例がないステージで踊ることに、辻本は、ワクワクしていました。

かの有名なバレエダンサーであり、俳優でもある、ミハイル・ニコラエヴィチ・バリシニコフ の言葉 ”他の誰かよりうまく踊ろうとはしない。自分自身より上手く踊るだけだ” は、辻本の在り方にも共通しているのかもしれません。

“挑む相手はいつも自分自身”。

出来上がったステージでの公演が、午前4時に開演しました。

踊り子は辻本と森山、観客は「きゅうかくうしお」のメンバーのみです。

“地鎮パフォーマンス”と名付けられた、非公開の公演。

自然への畏敬を感じるままに、ぶっつけ本番のステージが進みます。

振りとか形などは取っ払って、魂自身が響くような、踊りの起源に触れるような舞台だな、と私は感じました。

やりきった辻本は、いい表情をしていて、もうちょっと踊りたいなとコメントをしていました。

情熱大陸 辻本知彦(ダンサー・振付師)を観て

画面ごしとは言え、自分にとことん向き合って、ただ純粋にダンスが上手くなりたいという想いだけで、生きている人に触れられたことに、感謝があります。

辻本の視点の広さ、懐の深さ、できることは何でもチャレンジしようという凄味のある生き方が、他の人もまきこんで、大きな力となって、社会にも辻本自身にも良い影響を与えているように、私には感じられました。

 


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