情熱大陸 ハイテク技術を駆使!イノシシ被害に立ち向かう熊本の農家ハンター、宮川将人・稲葉達也!

2020年11月1日の「情熱大陸」は、「ハイテク技術を駆使!イノシシ被害に立ち向かう農家」。

熊本の若手農家たち約130人で組織された「農家ハンター」は、「地元の農業がイノシシ被害で、壊れてしまうかもしれない」という危機感から、当事者である農家自身が立ち上がり、作った、独自のグループです。

今、野生動物による農作物被害は、深刻な問題です。

2020年10月に、農林水産省が出している、「捕獲鳥獣のジビエ利用を巡る最近の状況」によると、野生鳥獣による農作物被害額は、158億円(平成30年度)にのぼると報告されています。

被害の約7割が、シカ、イノシシ、サルによるものです。

一般社団法人日本ジビエ振興教会(JGPA)は、平成21年度以前は、農作物被害額は、200億円を上回っていたのですが、最近は、数字は減ってきているとしています。

しかし、鳥獣被害は、農家の方々の意欲を減退させて、耕作放棄地の増加を引き起こすなど、被害額として数字に現れる以上に、農村漁村に、深刻な影響を与えているのだそうです。

問題が深刻化した理由として、⓵鳥獣の生息域が拡大したこと、⓶狩猟による捕獲量が低くなっていること、③耕作放棄地が増加していること、などが考えられるそうです。

稲葉達也と宮川将人は、この「農家ハンター」のリーダーです。

彼らは、メンバーとともに、農作物に被害を与える「食害」だけでなく、車両や人と衝突する「事故」の被害の増加に対しても、ハイテクを駆使して、独自の対策を始めています。

農家ハンターたちは、捕獲ワナの見回り負担を軽減する、通信装置を導入しています。

また、インターネットで捕獲の仕方や、イノシシの生態を把握し、SNSを通じて、成功体験だけでなく、失敗談も共有して、プロの猟師も驚く、捕獲実績をあげてきました。

名産のみかんやデコポンが、収穫の時期をむかえる今、冬支度のために、栄養を求めて人里に降りてくるイノシシに立ち向かう様子が、番組では紹介されます。

「熊本から日本を、農業を元気にしたい」と語る、宮川将人と稲葉達也。

単なる鳥獣駆除だけでない、大志を感じます!


情熱大陸 「くまもと☆農家ハンター」、稲葉達也、宮川将人のプロフィール

稲葉達也(いなば・たつや)は、1978年に熊本県三角町に生まれました。

熊本県の名産品、“デコポン”などを手がける、みかん農家です。

小学生から、ヨットに長け、海の仕事(ヨット大会事務局やマリーナ運営)に就きながら、兼業農家をしていました。

近年、野生動物被害が激増したことで、脱サラをし、農業をしながら、イノシシ被害に立ち向かう「農家ハンター」をしています。

現場のリーダーとして、地元で被害対策をする傍ら、熊本一円で被害にあう農家たちの相談にのっています。
鳥獣管理士、農作物野生鳥獣被害対策アドバイザー(農水省)、えづけSTOP!対策ソリューションアドバイザー(熊本県)の資格を持っています。

 

宮川将人(みやがわ・まさひと)は、1978年に、熊本県三角町に生まれています。

花農家で、稲葉とは中学の同級生です。

イノシシ被害で、農業のやる気を失っていることに、地域の危機を感じ、稲葉らと「農家ハンター」の組織を立ち上げた、発起人です。

東京農業大学在学中に、バックパッカーで13カ国を1人で旅し、オランダとアメリカで経験を積んで、家業を継ぎました。

自称サイバー農家として、早くからインターネットショップを手がけ、「楽天市場ショップオブザイヤー2017」を受賞しています。

「くまもと☆農家ハンター」の代表を務めています。

 

中学で、二人は、クラスメイトになりましたが、当時は、友達の1人といった程度の関係だったといいます。

宮川は、生徒会長を務め、稲葉は、ヨット部で活躍していました。

その後、稲葉はみかん農家を継ぐことなく、幼い頃からの憧れだった、海に関わる仕事に就きました。

かたや、宮川は、家業を継いで、花農家を営んでいました。

別の道を歩んでいた2人を、猪被害に苦しむ地元農家の叫びが、引き寄せることになりました。



情熱大陸 「くまもと☆農家ハンター」の、稲葉達也・宮川将人のイノシシ捕獲は、ハイテク技術とネットワーク力がものを言う!

稲葉は、みかん農家です。

ちょうど、早生みかんが実り始め、収穫を待つばかりです。

しかし、猪も、美味しくなる時期を知っていて狙っています。

稲葉の両親も、イノシシを何度も見かけ、そして、みかんの被害にも直面していました。

イノシシは賢く、いくつものみかんの木を味見して周り、甘いものだけを選んで、皮も剥いて食べていきます。

稲葉は言います。
「草刈りと一緒で、ネットを張ったりとか、ワナを見たりとかを、今後は、農作業の1つとして、やっていかないと、いけないかなぁって、すごく感じています」

早生みかんの収穫の最中、ハンターとしてのお呼びがかかります。

向かう先は、イノシシが頻繁に出るために、接触事故も起きている、不知火町大見地区です。

連絡をくれたのは、仲間の農家ハンターでした。

相棒の宮川も、現場に到着して、サポートに入ります。

目撃されている場所が、転々としているために、的が絞れないという問題がありながらも、稲葉は適格に罠を仕掛ける場所を指示します。

稲葉は、作付けを止めた耕作放棄地に入っていき、猪は、異変に敏感なので、ぼうぼうと伸びた草木を、なるべく切らずに、足元は、枯れ葉や餌の米ぬかで覆って、見えないように罠をしかけることを、仲間に伝えていました。

また、猪が、逃げやすい場所に罠を仕掛けるのも、警戒させないようにするポイントだと言います。

罠の檻も、新品ではなく、使い込んだもの持ち込みます。

獲物を檻に閉じ込める、扉とつながったワイヤーの張り具合が、重要だと稲葉は言います。

イノシシの力でなければ扉が降りない、絶妙の貼り具合の感覚は、稲葉ならではです。

そこに、デジタルな宮川が、カメラを持ってきて、設置します。

とらえた映像は、ネット上にアップされ、猪を識別するシステムにより、獲物がかかっているのかのチェックをします。

おかげで、罠をいちいち見て回る必要がなくなったといいます。

“感覚”דデジタル”、この相乗効果が、すごい!

2日後、仕掛けた罠に、イノシシが、3頭もかかっていました。

また、別の罠からも、捕獲が通知されてきました。

早速、近隣の農家の人に、捕獲したことを報告します。

少しでも、安心してもらおう、と農家の人の気持ちを痛いほど知る、「農家ハンター」の気遣いです。

イノシシは、大型になると、人を威嚇するために、農家の人たちは畑にいくのが怖くて仕方ないのです。

罠の檻の中のイノシシの迫力は、たいしたものでした。

伊之助の猪突猛進(ちょとつもうしん)のごとく、恐ろしい勢いで、檻に体当たりを繰り返していました。

檻が、当初置いたところから、イノシシが暴れたせいで、だいぶ動いていたようです。

これ以上、このままにしておくと、檻が破られる可能性があるようでした。

事実、檻を壊して逃走した例もあったとか。

稲葉は、電気ショックを与える道具を取り出し、宮川が、イノシシに水をかけて、電気が通りやすくして、苦しませることなく気絶させます。

これで、近隣の農家が、普通に農作業ができるのです。

稲葉は、村の人たちから、声をかけられることが増えました。

相棒の宮川は言います。
「この地区で、達っちゃんは、まさに新しいヒーローなんですよ。稲葉さんのトコの“どまぐれ息子”だったと思うから。それが、イノシシ対策をきっかけに、ほんと地域の人に、頼られる存在になって」

“どまぐれ”とは、元気がよすぎる息子、という意味のようです。

“稲葉家の元気が良すぎる息子”は、地域のみんなを支えて、“地域みんなを元気にする息子”、になったのかもしれません。


情熱大陸 「くまもと☆農家ハンター」は、稲葉達也・宮川将人の地元”愛”と、潜在力を信じる“心”から生まれた

稲葉の実家のみかん畑や、宮川の花畑を荒らすイノシシの被害に、地元の農業の未来を危惧した2人が、手を組んで、「くまもと☆農家ハンター」になったのが、4年前でした。

ハンターと農業は、なかなか両立できないと、稲葉は言います。

ハンターを1人でやっていくのではなくて、地域で一緒にやる、みんなが関わっているということが、すごく大切なことだと言います。

このことが、これからの農業の発展の大きな力になるということでしょうか?

宮川は、この活動を始めた想いを語りました。
「今から農業をやろうと言う人は、裕福になることを、捨てなきゃいけない雰囲気があった。使命だけでやらなきゃいけない雰囲気が、ありますよね」

そして、続けます。
「年々、時代を追うごとに、農業への、農家へのリスペクトがなくなっているのを、感じたんですよね」

稲葉が相槌を打ちます。
「農業へのリスペクトが薄まっていなかったら、みんな跡継いで、やっているよ」

農業をする魅力を見出せなくなって、農業の道を捨ててしまう人が多いことを、この2人は残念に、そして、もったいないと思っているのではないか、と私は思いました。

農業には、大きな可能性があるんだよ!彼らは、それを証明したいのかもしれません。

宮川が、「僕らは今、(裕福さを求める、使命感を持ってやる)これを両立できそうかなぁ?」と問うと、稲葉が、「今は、難しいかもしれないけど、もうちょっとだなぁって感じている」と答えていました。

農業の可能性の扉を、彼らはもうすぐ、開け放つのかもしれません!

ある日、稲葉と宮川は、農家ハンター仲間を集め、イノシシ対策のために、IT企業とタッグを組んで作った、3Dマッピングについて、説明をしました。

捕獲データをネット上に集めて分析することで、近い将来、天気予報のように、イノシシの出現ポイントが、予想できるというものだそうです。

のどかな田舎街が、イノシシをきっかけに、進化を続けていました。


情熱大陸 「くまもと☆農家ハンター」を巡る、稲葉達也・宮川将人の葛藤

稲葉が、「農家ハンター」になって、最も苦慮したのは、殺生と農業被害のはざまの葛藤だったといいます。

ある時、罠の檻に、2頭のイノシシの子どもが入っていました。

大人のイノシシを狙っているのですが、子どもがかかることもあるといいます。

しかし、イノシシはすぐに大きくなるために、ここで逃すわけにいかないのが、実情でした。

看護師をする、稲葉の奥さん(愛理さん)は、悩む稲葉をそばで見守ってきました。
「やっていけるのかな、と思っていました。基本的に優しいので。涙が出ちゃう。。。達也君がする必要があるのかな、とは思っていました」

稲葉は涙ながらにいいます。
「私、42歳で、まだ子供がいないんですよ。親父から、お前がそんなことしとるけん、子供ができんだろう、と言うようなことも言われて。だから、子供のイノシシを仕留めたりするのは、特に辛いんですよ」

一方、花農家の宮川は、「農家のハンター」を始めようとした頃、調度、次女の美澄(みすみ)ちゃんが生れた時期でした。

美澄ちゃんは、壁に向かって倒立をして、左右交互の腕で、身体を支えて見せてくれました。

そんな運動能力を支えているのも、豚肉代わりのイノシシ肉です。

当初、手弁当で始めた「農家ハンター」は、人に会うために、さまざまな所に赴くために、お金が随分かかったのだと言います。

家計を圧迫して、妻(水木さん)は、子どもの習い事をみんな辞めることになったと言っていました。

宮川は、「ほんとにね。残高146円だったんですよ。僕のメイン口座が。それを見た時は、ほんと、周りが見えちゃいなかったな、と思ったよね。笑えましたけど」とその当時を思い出しながら、語っていました。

2人とも、地元をこのままにしておけない、今ある状態を変えることができる、可能性は大いにある、という想いだけで突っ走ってきたのだろうな、と、番組をみていて、思いました。


情熱大陸 「くまもと☆農家ハンター」は国連(SDGs)で高評価。“イノシシは恵み!“ 稲葉達也・宮川将人、地域のヒーローが目指す農業、地域活性化とは?

農業被害だからといって、「農家ハンター」は、悲観していません。

むしろ、イノシシを“恵み”と捉えて、地域の活性化につなげようとしています。

宮川は、言います。
「イノシシは、過疎地域にしかいないですからね。都会の人には手にできない、地域の、今までは害獣と言われていたものを、僕らは、宝にしていける、という手ごたえが、すごくありますよね」

去年(2019年)、イノシシの肉を加工するための施設を作りました。

猟師なら、仕留めて終わりですが、稲葉と宮川は、処理方法を突き詰め、イノシシ肉を臭みのない、柔らかな高級肉として、ネットショップで売り出しました。

ものによっては、ペットの餌用に加工し、内臓などは、堆肥として活用します。

肉だけでなく、革も革製品(例:マスク入れ 時計ベルト)に加工し、油は、高級石鹸に変えました。

稲葉は、言います。
「イノシシを、絶滅させようとかじゃないんです。外来種でもなく、在来種だし、今、バランスが崩れているだけなんです。山に居ていいし、里に降りてきてしまったイノシシさんたちを、捕まえる」

宮川も、「山で平和に暮らしているイノシシさんたちには、手を出さないを、徹底しています」と言います。

猪の肉を広めようと、宮川は、熊本市内の製薬会社、KMバイオロジクス㈱を訪れていました。

宮川に、営業をするという意識は無いと言います。

企業の人に、「僕らに募金してくださいよ、寄付してくださいよと言う話は、ちょっと違うなと思っています。社食とかで月に一回、年に1回でもいいので、イノシシのジビエを食べていただいたりとか」と、理解と協力を呼びかけます。

「人に、応援団になってもらうのが、僕、すごい得意技なんですよ」と宮川は笑顔で言っていました。

そしてこの秋、1つの成果が実りました。

「農家ハンター」の稲葉と宮川が、2年前に始めた、耕作放棄地の再生プロジェクト!

畑の土から、太った形の良いさつまいもが、ゴロゴロと出てきました。

無農薬で、イノシシの堆肥で育ったさつまいもです。

イノシシの堆肥は、とても良いようです。

「大人になって、こんなに嬉しいのは初めて」、「めっちゃ感動した!」
2人の男が、口々に嬉しそうに言い合いながら、畑でサツマイモを掘っていました。

また一つ、循環システムの可能性が広がったのですね。
2人のわくわく感がじんわりと伝わってきました。

同級生2人ではじめて、約130人の集団となった「くまもと☆農家ハンター」の活動は、去年6月、国連でサステナブルな取り組みとして、高く評価されました。

自分たちの手で、農業を守ると同時に、駆除したイノシシをビジネスにするという循環を、利益優先ではなく、次に繋げていく力とするなんて、すばらしい!感動があります。


情熱大陸 「ハイテク技術を駆使!イノシシ被害に立ち向かう農家」を観て

稲葉と宮川の、地域が持つ可能性を、信じ続ける信念に感動しました。

また、“イノシシへの敬意”も感じました。

地域に恵みを与えてくれる大切な存在として、「イノシシさん」と呼ぶ呼び方にもそれを感じました。

自然の恵みを、欲を加えることなく、そのまま頂く、そして、全部使いきって、持続可能な社会を築いていくことが、今大切なのだな、と改めて思いました。



 

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