情熱大陸にレストラン「ヴィラ・アイーダ」(和歌山県岩出市)の小林寛司シェフ

2020年7月12日(日曜日)の「情熱大陸」には、和歌山県岩出市で「ヴィラ・アイーダ」を営む小林寛司(こばやし かんじ)シェフが登場しました。

さまざまなメディアで取り上げられている小林寛司シェフ。
彼の創る料理に、国内外の料理人やグルマンがこぞって足を運びます。
どこに、魅了されるのでしょうか?

彼は、単に技巧に頼った料理を極めるシェフではないのです。
名刺の肩書に「シェフ&ファーマー」とあるように、彼は、店の周りの畑で、使いたい野菜やハーブを150種類ほど栽培していて、朝収穫したみずみずしい野菜をふんだんに使い、その味わいを際立たせた“ここでしか味わえない”料理をふるまうのです。

そして、魅力ある料理もさることながら、彼の生き方や世界観が、ここ最近注目されています。
きっとこんな生き方を欲っしている人はたくさんいるはず! 私もそうです!

彼の世界観に触れ、心にパワーをチャージしていただけたらと思って、ご案内します。



一度は訪れてみたい野菜の“魔術師”小林寛司(こばやし かんじ)シェフの“和歌山キュイジーヌ”「ヴィラ・アイーダ」(岩出市)

小林寛司シェフの「ヴィラ・アイーダ」は、ヨーロッパの田舎の農家を思わせる造りがステキなお店です。
三方を畑に囲まれ、そこに埋もれるかのように立っています。
素朴な佇まいが自然に眼に馴染むといいますか、日常から解放された空間に、ほっとする気持ちにさえなります。

和歌山県のどの辺りになるのでしょうか?
全く土地勘がない所ですので、すごく遠いイメージがありますが、実は、意外にも行けそうなのです。
都内からであれば、レストランの最寄の岩出駅まで5時間くらい。
朝、気合を入れて早起きをして現地に向かえば、ランチには間に合いそうなのです。
ランチを食べに、はるばる和歌山まで。なんて贅沢な時間でしょう。
関西の方ならより近く手軽に行けるかと思います。

住所   和歌山県岩出市川尻71‐5
71-5 kawajiri iwadecity WAKAYAMA JAPAN
定休日   : 不定休
営業時間   : 12:30~
飛行機       :関西空港よりタクシーで30分
車             :阪和道泉南ICを出て左折。約12km(15分)
阪和道和歌山北ICから16km
※駐車場完備
電車          :大阪方面からはJR阪和線紀伊駅で下車。
南紀からはJR和歌山線岩出駅で下車
タクシーで紀伊駅からは15分、岩出駅からは5分
「ヴィラ・アイーダ」のHPより

意外に便の良いところが、国内外のお客さまが足を運びやすいということなのかもしれません。

1日1組、最大10名の予約を受け付けています。
また、内装もリニューアルして、10名が一緒に料理を楽しめるテーブルと、食前酒や食後のお茶をゆっくりと楽しめるスペースを用意しているとか。

小林寛司は、「自分たちの料理を好きでいてくれる人に、もう少しゆっくりしてほしい。 畑を案内してから食事を始めたり、生産者と一緒にワークショップをしたり、会話したりワインを飲んだり。まわりの評価を気にするのではなく、自分に素直でいたい。」と語っています。

この言葉に、儲けようとか、人気店としての驕りなどは微塵もなく、ただ自分が信じる食の在りように共感するお客と共に時間を過ごしたい、という素朴な願いを感じます。

人気がある上に人数も限られるお店なので、なかなか予約が取れないかもしれませんが、是非一度訪れてみたい人は、多いのではないでしょうか。

かくいう私もその一人です。
そして、お料理だけでなく、小林寛司シェフの生き方、哲学を体感してみたいと思っています。


小林寛司(寛治)シェフの情熱大陸で垣間見た素顔とは

“小林寛司”は、よく“小林寛治”と間違われますが、司の字が正しいのです。
小林寛司とは、どんな人なのでしょうか?

1973年、和歌山県に兼業農家の長男として誕生しました。中学生の頃、母親の影響を受けて、お菓子作りにはまっていたといいます。飲食店ばかりでアルバイトをしていて、作ることがどんどん上手くなるのが嬉しくて、そこから、料理の道に進むことを決めたといいます。

そして、色彩豊かでクリエイティブなイタリアンの世界観に惹かれ、大阪のイタリアンレストランに弟子入りしました。
そこから、21歳でイタリアに渡り、4年で8つの料理店を経験し、料理修業にはげみました。

帰国して、当初はどこかの店に勤めようとしたのですが、思うような店がなく、どうしようかと悩んでいたところ、実家が兼業農家で畑を持っていたので、一部をつぶして、「リストランテ アイーダ」(旧店名)を構えることにしました。25歳の若さでの独立でした。

この店では、星付きレストランで学んだ料理を、イタリアから輸入した高級食材を使って、できうる限り再現して提供していたそうです。
当初物珍しさも手伝って繁盛していましたが、3年も経つと客が減り、借金がふくらむ事態に。

これは、地元には、高めの値段設定であったことと、何より本場のイタリア料理への馴染みがなかったことが原因だったということです。
そして、心配した周囲の人からは、「値段を下げて、量を増やして」と助言を受けたのですが、何だかピンとこなくて、暫く孤立している時期もあったとか。

相当悩んだヒマな時期に、思い出したのが、イタリア時代のことだったそうです。

修業した8つのどの店も、その土地で作られる肉や野菜に絶対の“誇り”を持っていました。
例えば、日本では、牛肉を例にとると、一定の品質基準に応じて、全国や世界からランクのいいものを集めて料理をします。

でも、イタリアでは、ある店で、「この地方の肉はどこよりもおいしい」と教わっても、また違う場所にある店では、「うちの地元の肉が一番おいしい!」とあたり前のように言われるのです。

地産地消という言葉など存在していませんでしたが、地元の食材が一番で、「ないものをわざわざ使わない」という考え方があたり前の世界観なのです。

また、最後に修業した、ナポリ湾の近くの南イタリアで初めて三つ星を獲ったリストランテでは、野菜やハーブは自家農園で栽培し、チーズなどは知り合いの農家から取り寄せて、伝統的な南イタリアの郷土料理を洗練されたスタイルで提供していました。
夏に獲れたトマトは水煮をはじめ、乾燥させてスパイスにするなど、旬の時期に収穫した素材をさまざまに加工して、貯蔵し、1年かけてずっと使い続けていたことを思い出したそうです。

イタリアの星付きレストランで学んだ料理を、素材の置き換えをして作っても、自分の料理にならない、そして、地元にある食材で工夫して作っていくことが大切なのだと、気づかされたのだそうです。

「足元にある食材に誇りを持て」

幸い実家には畑があったので、コストをおさえ、質を高めた料理にしようとするなら、自分で食材を作るしかありませんでした。その為、地元の野菜はもちろん、欲しいものは種から仕入れて育てていきました。
そして、今まで自分を束縛していた観念から自由になって、自分のやりたいことが見えてきて、自分で野菜から作って、組み合わせて新しい味を作ることが、どんどん楽しくなってきたのだそうです。

「自分が楽しんでこそ、人を楽しませることができる」

小林寛司シェフの毎日は、手塩にかけた食材から最良の味を引き出す工夫の日々。
キッチンでは、いつも自問自答を繰り返しています。
お客にどんな料理を提供するのか?まずは野菜の声に耳を澄ませます。
そして、「何かが足らん。何が足らんだろう?」と試作し、「もっとサプライズを」と昼も夜も考えに考えた上に、偶然というか、ふと閃く瞬間がくるらしい。

でも、これは偶然ではないと思います。
小林寛司シェフは、日々、「現状維持は衰退」自分に言い続けているので、常に変えていきたいという想いと努力が、閃きを必然的に呼ぶのだと思います。

情熱大陸では、仏で日本人初のミシュラン星2つを獲得した、業界で誰もが知る佐藤伸一シェフが「ヴィラ・アイーダ」の3度目の訪問を放映していました。
小林寛司シェフは、「同業はやっぱ緊張する、同業の人は料理で全部わかっちゃうから。いいも悪いも伝わるから」といつにも増して、前日より試作に神経をとがらせていました。
そして、考え続けた時に、閃きが降りてきて自信作が。

佐藤伸一シェフが友人のフレンチの高田裕介シェフ(ミシュランガイド京都・大阪2つ星 ラ・シーム高田裕介シェフ)と「ヴィラ・アイーダ」に到着して、料理を待っていると、自信作の和歌山湯浅の岩ガキと、ジャワほうれん草、ニンジンのお花の一品が初っ端に登場しました。

口に運んだ佐藤伸一シェフが、「へぇー、美味しい。優しい」と率直な感想。
そして、「何か新しいことをしないと、とか新しい料理作らなきゃって、結構無理に考える自分がいるんだけど、(これには)ないんだよね。この組み合わせは、ぜんぜん自然じゃないのだけど、自然にしか感じない」と。

そして、メインディッシュは、「野菜です」と供された、野菜の盛り合わせ。
佐藤伸一シェフは、「はぁすごいわ。料理人やめたくなっちゃうわ」と感嘆の声をあげていました。

仏ミシュラン2つ星レストランを率いる佐藤伸一シェフにこんな風に言わしめるとは!
何てすごいんでしょう。

食べてみたい!でも、私にはそんな繊細な作り手の想いを受け留めて理解できるのか、不安にすら感じました。
そして、小林寛司シェフの料理は、素材の特徴を生かして、でも自然のままに身体にも心にもやさしい料理なのだろうな、と思いました。

【MY WAY EXPO 2019】ヴィラ・アイーダ (Villa AiDA)20周年記念イベントが大阪で開催された

2018年12月20日に20周年を迎えた「ヴィラ・アイーダ (Villa AiDA)」の、小林寛司シェフが、【MY WAY EXPO 2019】と銘打って、親しくしている地方シェフや生産者を全国各地から総勢74人を集めて、2019年4月14日に『OSAKA FOOD LAB』にて、イベントを開催しました。

内容は、都心×地方、地方×地方のトークセッションやワークショップでそれぞれの取り組みや食にまつわる問題提議と解決方法、自然で継続可能な暮らし方の提案を話し合いながらシェフたちによるフードブースの料理、ワインやカクテル、日本酒で身と心を満たして、さらにこだわりの食材が購入できるという食の祭典でした。

まさに、小林寛司シェフが20年の間に培ってきたものの集大成となるイベントであり、彼の感謝を表す企画だったのではないかと思いました。

私が地方でレストランを営むことから感じることはもちろん、親しくさせて頂いているシェフや生産者の皆様に全国からお集まり頂き、イベントを通してそれぞれのシェフの気持ちを共有し発信するという「食の祭典」にしたいと考えています。小林寛司
(出典:【MY WAY EXPO 2019】HPより)

地方で、お客がこない店をどうしたら良いのか孤立するような状況にありながら、今や、点を線に、また面にして仲間を増やして、タッグを組み、自らの道を邁進している小林寛司シェフに畏敬の念を覚えます。

そう、一人では何もできない、仲間がいればこそ、我が道もいけるんですね!


小林寛司が本「villa aida 自然から発想する料理」を出版

現状、県境を跨いでお店に行くことが憚れる、という人も多いのではないかと思います。
小林寛司シェフの料理を味わうことはできないけれど、眼で味わい、その生き方に触れることが、実はできるのです。

それは、「ヴィラ・アイーダ」(旧店名リストランテ・アイーダ)開店20周年を機に、小林寛司が出版した本「villa aida 自然から発想する料理」です。

そこには、日々店の周りにある畑の土に触れ、季節とともに料理を作る「ヴィラ・アイーダ」の1年と、「イタリアン」のジャンルを超えた独創的な珠玉の120皿が紹介され、料理人仲間や生産者との交流、日々の畑仕事、魅力的なレストランの作り方など、小林寛司シェフ自身の想いや哲学が語られ、「ここにしかない野菜料理」と「地方ガストロノミー(高級レストラン)の可能性」が詰まった一冊だそうです。

さまざまな想いが記されているだろう1冊。是非読んでみたいです。

「ヴィラ・アイーダ」がサステナビリティ(Sustainability)で評価

「ヴィラ・アイーダ」が、「Top 100 Best Vegetables Restaurants 2019」で17位に選出

「ヴィラ・アイーダ」は、ベルギーのシェフが主催する「WE’RE SMART」より、野菜を生かした世界のトップレストランをランキングする「 Top 100 Best Vegetables Restaurants 2019 」で17位に選ばれています。
世界であまたあるレストランの中で17位なんて、すごすぎです!

このランキングに選出されたのは、レストラン周辺の畑では100種類以上の野菜が栽培され、ジャムや、野菜のピクルス、乾燥野菜を作ることで作物のロスを出さず、自然のサイクルを優先した日々の生産と未来の世代の為の食を通じてのアプローチに「ヴィラ・アイーダ」のスタッフ(生産者)が強くコミットしている、「ヴィラ・アイーダ」の「ロカヴォア(*1)」哲学が評価されたから。

(*1)ロカヴォアとは、2005年サンフランシスコで行われた「世界環境デー」で誕生した言葉で、ローカル(local)と、「~を食べる人」という意味の接尾語ヴォア(vore)を合わせた造語。地元の産品を食べる人のこと。日本の「地産地消」やイタリアのスローフード運動などにも通じる概念。

これは、自然に根差し、等身大の自分を尊重してきた小林寛司シェフの想いとスタイルが、評価されたということではないでしょうか。

そして、サステナビリティを掲げるこのランキングは、食の安全に対する意識の高まりによる「Farm to Table」(フレッシュな食材を、農場から食卓へ)の世界的な広まりから、今後ますます注目されていくのでは、と思われます。

小林寛司シェフが、SDGsカンファレンス “食×SDGs” Conference-Beyond Sustainability-#1に登壇

2019年11月27日に東京ミッドタウン内で行われた料理通信社が主催する“食×SDGs” Conference Beyond Sustainability#1 の基調講演に小林寛司シェフは登壇しています。

SDGsって、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標のことですよね。世界の目標達成について考えるカンファレンスの基調講演に呼ばれるなんてすご~い!

この基調講演は、「食と農のつながり、これからの人と社会の豊かさ」をテーマに、「kurkku」代表/音楽プロデューサーの小林武史(*2)との対談形式で行われました。

(*2)音楽プロデューサー。2010年に千葉県木更津市に農業生産法人「耕す」を立ち上げ。“次世代も使い続けられる農地”を目指した有機農業への取り組みが、2019年秋、サステナブルファーム&パーク「KURKKU FIELDS」として稼働。

小林どうし仲の良いお二人。小林武史氏の言葉に、小林寛司シェフが作る料理への感動とリスペクトを感じました。
「寛ちゃんの料理を食べて勘のいい人だなと思った。素材に反応する力というのかな。採り遅れた野菜、早く採った野菜、すべての命の状態に順応している料理なんです。野菜と畑がシームレスで、冷蔵庫のように畑がある」

この基調講演で、小林寛司はこう語っています。

「僕にとって、畑は新しい味を作るための場所。朝は8時に畑に入り、その後、ランチの仕込みをして、ランチが終わるとまた畑の手入れをするという生活を送ってきました。次第に畑の時間が長くなったので、今年(2019年)の春から、最大10人が座れる大テーブルひとつの空間に変えて、お客さまを1日1組に絞りました。その代わり、昼夜関係なく何時スタートでもかまわない。昼と夜、両方やっていた時は自分がしんどかったから、そうならないように変えて、お客さんにもゆっくりしてもらおうと。自分が心身健康でないと、他人にも優しくなれないです。それがサステナブルかどうかは意識したことがないのですが……」

サステナビリティであり続けるためには、自然のままに無理をせず、安心のある環境が必要なのではないかと、小林寛司シェフは、心身で感じ取っていたのかもしれません。

情熱大陸でレストラン「ヴィラ・アイーダ」(和歌山)の小林寛司シェフのを観て

20年前に、苦しみながら、でも自分の心の声を見失わなかった小林寛司シェフ。やりたかったことは、商売ではなく、より充実したやりがいのある生活なのかもしれません。

どうしても、お金がないと、が心配になってしまう世の中。

そんな中で、その声に惑わされなかった人だけが、本当の豊かさと楽しさを手に入れられるのかもしれない、と私は思いました。
そして、誰もが同じようにその可能性の扉を持っているのかもしれないなとも思いました。

 

 

 


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