2020年8月8日放映の「題名のない音楽会」には、世界的なピアニストである、ラン・ランが登場。
彼が、20年かけて挑んだ“鍵盤楽器奏者にとってのエヴェレスト”と形容されるJ.S.バッハの最高傑作「ゴルトベルク変奏曲」の中の楽曲の演奏が、映像とともに放映されました!
ラン・ランの世界に聞き惚れました。本当に素晴らしかったです!
世界的に有名なピアニストであるラン・ランが、20年もかけて取り組む難曲「ゴルトベルク変奏曲」とは、どんな曲なのでしょう?
この曲は、最初と最後のアリアの2曲と、その間の30の変奏曲で構成され、全曲が同じ低音を土台に作られている曲といわれています。バッハの音符の組み合わせの巧みさは驚くばかりだそうですが、ただ曲を聴くだけも、祈りを感じる美しい曲だな、と私は思います。
もともとチェンバロで演奏されるこの曲に、さまざまなピアニストがチャレンジして演奏しています。
番組では、バッハに詳しい鈴木優人が、作品の魅力を解説しながら、ラン・ランが表現する「ゴルトベルク変奏曲」を堪能しました。
ラン・ランは、20年以上研究してきた「ゴルトベルク変奏曲」を録音する事は、”生涯の夢”と語っていて、2020年9月4日に、ユニバーサル ミュージックよりアルバムが発売されます。
また、後進の育成を自分の”第二の仕事”としている企画もあり、視聴者からのピアノの練習にまつわるお悩みにもラン・ランが直接答えてくれていました。
すてきですね!
スーパースターでありながら、ピアノに親しむ人や、音楽に携わる人の隣に寄り添うようなラン・ランに本当に感激しました。
題名のない音楽会 ランラン(ピアニスト)はどんな人?
ラン・ラン(郎朗/Lang Lang)は中華人民共和国のシェンヤンで、祖父が音楽教師、父は中国の伝統楽器・二胡の演奏者であるという音楽一家に生まれた(1982年6月14日)ピアニストです。
ラン・ランの名は中国語で“輝き”を意味するそうです。
父の英才教育のもと、3歳の時にピアノを学び始め、5歳の時、初めての発表会後のシェンヤン・ピアノ・コンクールにて第1位を受賞。9歳で北京の中央音楽学院に入学して、13歳で第2回チャイコフスキー国際青少年音楽家コンクールにおいて第1位となっています。
その後フィラデルフィアへ移住し、かのカーティス・インスティテュートでゲイリー・グラフマンの下で学んで、2002年に卒業しています。
幼いころからその才能は評価され、14歳のとき、当時の江沢民国家主席に「中国のモーツァルト」と評されていて、中国人としては初めてウィーン・フィルハーモニー、ベルリン・フィルハーモニーと共演したピアニストです。
輝かしい経歴の持ち主でありますが、ここからの活躍もすばらしいのです!
2008年には北京五輪の開会式で演奏し、2009年にはオバマ大統領のノーベル平和賞受賞コンサートにソリストとして出演、また、ジャズの巨人ハービー・ハンコックとのツアーをするなど、クラシック音楽の枠を超えた幅広い活動を展開していて、2009年にはTIME誌の毎年恒例の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれています。
そして、映画「のだめカンタービレ最終楽章」で、上野樹里が演じる主人公“のだめ”のピアノ演奏の全曲の吹き替えをしています。
これは、あまりに有名ですね!
2020年4月には、レディー・ガガとWHOが主催した「新型コロナ対策支援オンラインライブ」「One World: Together At Home」の特別放送に、レディー・ガガや、セリーヌ・ディオン、アンドレア・ボチェッリと共演をしています。
音楽家として、年に100近いコンサートをこなしながら、演奏活動だけでなく、貧困層の子どもたちや若い音楽家に向けての音楽教育やアウトリーチプログラム、経済的な支援も行っています。
ラン・ラン自身が2008年にグラミーとUNICEFの援助のもと設立した、「ラン・ラン国際音楽財団」では、次世代のピアニストの育成や、最先端技術を導入した音楽教育に力を注いでいます。
「ラン・ラン国際音楽財団」が設立されたのは、2008年頃のアメリカの公立学校の一部では、音楽の授業がまったく行われておらず、音楽に接する機会を取り戻したい、と考えたのがきっかけです。
10年以上経った今では、アメリカ国内の40校ほどで「ラン・ラン・メソッド」による音楽の授業が行われています。タブレット端末や3D映像などの最新テクノロジーを使って、ゲーム感覚で音楽を楽しめる内容になっているのです。
音楽の楽しさや楽しみ方を伝えたいラン・ランの想いを乗せているメソッドなのだな、と思います。
彼は、2004年に国際連合児童基金(ユニセフ)の国際親善大使に任命され、中国とハイチの地震救援基金集めをしました。
その後も年間25回ほどのチャリティー公演の実施など、ユネスコの親善大使を務めています。
本当に素晴らしいピアニストです!
世界各地で活躍するドイツの名指揮者・クリストフ・エッシェンバッハ氏は、そんなラン・ランについて、「子供のときから知っていて、彼は今、立派な音楽家になった。ご存知のようにユネスコの親善大使として辺境地の子供たちを支援しており、心優しい芸術家になった。芸術家であっても世の中から離れてはならず、この点でラン・ランはすばらしい」と話しました。(出典: 2019-06-21 16:45 CRIより)
「題名のない音楽会」でも、ピアノを習う子どもたちに、アドバイスをしてくれました。
解説者の鈴木優人は、「彼のアドバイスは本当にすばらしい」、と感嘆の声をあげていました。
例えば、
Q: ソナチネを勉強中の子から、ミスタッチをしないで弾けるようになるにはどうしたらよいか、
との質問には、
A: まずは片手ずつゆっくり弾いてみるべき。両手で弾くことから始めないでください。練習は急がず合間に少し時間をとりましょう。何か目標か課題を考えてください。片手で練習した後に、両手でゆっくり何度か弾いてください。その時は止めないで、通して練習してください。
と、アドバイス。
これについて、鈴木優人は、「ミスタッチの箇所を繰り返し練習するように」、とは言わずに、「曲全体を把握してその流れを止めないで弾くように」とアドバイスをしていることが素晴らしい!と言っていました。
間違えた箇所について繰り返し練習をすることは、間違える練習をしてしまうことになってしまうのだとか。聴衆は、演奏全体を楽しんでいるのだから、流れを止めないで弾くことは、とても大事なのだそうです。
常に、音楽を聴衆に届けることを意識することが大事だと伝えているのかもしれません。
また、
Q: 息子にピアノを習わせているが、あまり関心がないようで練習をサボりがち。息子のやる気を起こさせるにはどうしたらよいか?
この質問には、
A: 息子さんが喜んでいけるような音楽のジャンルを見つけるべき。もしかしたら、クラシックにそんなに興味がないのかも。ポップスやリズム感の良い音楽など例えばバルトークの作品のようなものでもよいかもしれません。まずは、子どもが楽しんで弾くことが出発点。そこから徐々にクラシックに導くこともできる
と、アドバイス。
音楽を愛して好きになってほしい、そして音楽の力を信じるラン・ランならではのアドバイスだな、と私は思いました。
題名のない音楽会 「ランラン(ピアニスト)ピアノブック」
ラン・ランが2019年に出したアルバム、「ラン・ラン ピアノ・ブック」。
「エリーゼのために」(ベートーヴェン)、「乙女の祈り」(バダジェフスカ)など、ピアノを習ったことのある人なら、練習曲として弾いたことのある馴染みの曲が入っている小品曲集です。
私もかつて弾いたことのあるこれらの曲を、ラン・ランが弾くとどのようになるのでしょう?
聴いてみたい!とわくわくしますね。
ラン・ラン自身、幼いころは楽譜に忠実に演奏していましたが、あらゆる曲を演奏してきたことで、作曲家への理解が深まり、改めて小品曲を弾いてみることでの意味は大きかったといいます。
このアイディアは、ウラディミール・ホロヴィッツに影響を受けたのだそうです。
ホロヴィッツが、シューマンの「トロイメライ」などの小品を、全ての音楽体験を注ぎ込んで演奏しているアルバムを聴いて感動した経験から、ラン・ランは自分もやってみようと取り組みました。
アルバム収録曲の中には2曲、日本の作品が入っています。
1曲は、坂本龍一さんの「メリー・クリスマス・ミスター・ローレンス」(映画『戦場のメリー・クリスマス』より)。ドラマチックでハーモニーの使い方が独創性なところが気に入ったとか。
「よりドラマチックな演奏にしたい!」と、ラン・ランから話を受けた坂本隆一は、ラン・ランのために曲のアレンジをしたのだそうです。
もう1曲は、宮城県仙台市出身の作曲家・菅野よう子の「花は咲く」。ラン・ランは、13歳の時に仙台で開かれたピアノコンクールで優勝したことから、その時の思い出によるご縁と、曲から深い癒やしに感動して、アルバムに加えました。
このアルバムの日本版には、全30曲中、日本の作品と中国の作品を各2曲、韓国の作品が1曲収められています。
ピアノはヨーロッパで生まれて普及してきた楽器ですが、今ではアジアの演奏人口のほうが、多くなってきています。
今こそ、アジアから世界へ音楽を広げたい。そんなラン・ランの想いの詰まったアルバムが、「ラン・ラン ピアノ・ブック」なんですね。
題名のない音楽会 ランラン(ピアニスト)と「ゴルトベルク変奏曲」
ラン・ランは、20年以上研究してきたJ.S.バッハ作曲の「ゴルトベルク変奏曲」を録音する事は、”生涯の夢”と語っていました。
そして、2020年9月4日に、ユニバーサル ミュージックよりアルバムが発売されます。
「ゴルトベルグ変奏曲」への取り組みについて、ラン・ランはこう語っています。
「これは鍵盤楽器のために書かれた作品の中でも、最も例外的な作品であり、創造力がみなぎっていると同時に、最高に多次元的です。全身全霊を傾けることを要求されると同時に、自分に何が欠けており、いまから何を学ぶべきかを、教えてくれます。私は今38歳です。年寄りではないですが、自分の音楽家としての成長のうえで、新たなステージに進むべき時がきたと、考えています。そこで《ゴルトベルク変奏曲》を通して新たな領域へ足を踏み入れ、このプロジェクトに完全に没入したのです。私が演奏家として目指しているのは、よりいっそう自己を認識し、聡明になると同時に、ほかの人たちに刺激を与え続けること。その目標は常に自分の中にありますが、今回のプロジェクトは、そんな私の歩みをさらに前へと進ませてくれました」とコメントしている。
(出典:Tower Record ニューリリース | タグ : クラシックLP 2020年07月13日 「ラン・ランのバッハ:ゴルトベルク変奏曲~輸入盤はスタンダード版、デラックス版、LPの3仕様」より )
「題名のない音楽会」では、「ゴルトベルク変奏曲」が、どうして、“エベレストに登るほど難しい曲”と言われるのかについて、鈴木優人が解説していました。
まず一つ目は、もともとチェンバロで演奏する楽曲をピアノの語法に置き換えて演奏することが非常に難しいことなのです。
チェンバロは、バッハ(1685年~1750年)が活躍した時代の鍵盤楽器で、鍵盤が上下に2段あります。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、今はほとんど見なくなりました、エレクトーンのような鍵盤の配置になっています。
「ゴルトベルク変奏曲」は、この2段の鍵盤をフルに使って弾くように設計されています。
左右の手が交差して演奏するようなメロディーを、チェンバロでは容易に演奏できても、鍵盤が1段しかないピアノで弾く場合、左右の手指が重なってしまい、頭の中が整理されないとうまく弾くことができなくなります。
確かに!
バッハの曲は、左右どちらもメロディーを弾くので、指が今、どちらのメロディーを弾いているのかが、分からなくなってしまいそうです。
二つ目に、曲の構成があります。
この曲は、演奏に1時間半もかかる大曲なのです。
最初と最後のアリアの間に、このアリアのメロディーを元にした30の変奏曲があり、全部で32曲の構成になっています。
変奏曲とは1つのメロディーをアレンジを変え演奏することです。
例えば有名なのが、W.A.モーツアルト作曲の「きらきら星変奏曲」。
テーマとなるメロディーを、次に繰り返す時は、リズムや装飾を変えて演奏し、その次は、音階を加えてスケール感を出して演奏がされています。
つまり、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」の30の変奏曲は、アリアを元にアレンジを変えた演奏を30回行うということなのです。
その為、高い技術と表現力が求められる楽曲で、ラン・ランのように卓越したピアニストであっても、バッハの世界を自分のものにして、聴衆にプレゼンテーションするには、20年が必要だったのです。
番組では、ラン・ランによる、冒頭のアリアの演奏が放映されました。
このアリアは、ラン・ランが世界で一番好きなアリアなのだそうです。
最も美しい冒頭のこの8小節を演奏すると、偉大な音楽の神様であるバッハとの会話が始まり、弾き始めから音楽に深く入り込める、そんな作品だと言っています。
「ダウンビートで進むベースラインに沿うだけのとてもシンプルな曲で、まるで魂が高揚しているようです。ベースが高揚感を放ちつつも、旋律全体の安定感が保たれて、しっかり地に足がついた、正に夢のようなすてきな瞬間です。
旋律について、ラン・ランは、何かに苦闘していたり、孤独になったり、そして次第に孤独なストーリーから逃れるための出口を探し始めるようだ」
と、ラン・ランは解説しています。
全曲を弾いたあと、最初の出発点であるこのアリアに戻ります。
「今度は、完結しなければなりません。でもここでも何かをすることはないと言います。既に85分間、美や苦闘や悲しみを経験しているから。その経験は、知らないうちに本質を伴う実りとなってよみがえってきます。ただそれを、思い出を語るように、直観に従って演奏するだけ」
と、ラン・ランは語っています。
解説者の鈴木優人は、その演奏を絶賛していました。
「すばらしいですね!バロック時代は自由に装飾を入れて演奏して良いという、装飾法というものがありました。ラン・ランの場合、メロディーが繰り返される時の装飾を、本当に派手に入れてきています」
アリアに対するラン・ランの解釈については、ユニバーサルミュージックの「ラン・ランが語る《ゴルトベルク変奏曲》~アリア編」公開!(2020.08.11)で視聴することができます。
この解釈を見た後に彼の演奏を聴くと、一層、ぐっとせまってくるように聴こえてくるように思いました。
題名のない音楽会 ランラン(ピアニスト)が腱鞘炎から復帰!
ハードなスケジュールで世界中を飛び回っているラン・ランは、2017年に左手の腱鞘炎を患い、1年3ヵ月もの間、休養をしていました。
復活コンサートは、2018年年7月にアンドリス・ネルソンス指揮のボストン交響楽団との共演です。
この間の気持ちをラン・ランは、以下のように語っています。
悪いことばかりではありません。「生きるうえではバランスが大切であり、何ごとも焦ってはいけない。次へ進むために準備することが重要なのだ」と学ぶ期間であったと思います。人間として成長できたし、忍耐力もついた気がしますね。そうそう、全身のエクササイズを継続して、食事に気をつけたおかげで、故障する前よりもずっと体調がよくなったんです。だから「結果オーライ」ですね。
(出典:婦人公論jp. 「ラン・ラン クラシック界のスーパースターが故障と闘った1年3ヵ月」2019年06月06日)
故障して、ラン・ランは、ピアノが自分にとって、どれほどかけがえのないものであるか、そして、自分をピアニストにするために、バックアップを厭わなかった両親の深い愛を痛感したと語っています。
題名のない音楽会 ランラン(ピアニスト)が結婚
そんなラン・ランが、2019年6月2日、12歳年下のドイツと韓国のハーフであるピアニストのジーナ・アリスさんと、ヴェルサイユ宮殿で、結婚式とお披露目のパーティーをしました。
すごいですね。ヴェルサイユ宮殿で結婚式をするなんて。
門出を祝した乾杯には、「モエ・エ・シャンドン モエ アンペリアル」が巨大なシャンパンタワーに華やかに注がれたとか。
なんとも豪勢ですね~
二人は、ベルリンで出会い、ラン・ランの一目ぼれだったようです。
ジーナ・アリスさんはすごくスタイルも良い上に、瞳が印象的なきれいな方で、二人は本当にお似合いのカップルです!
ラン・ランいわく、生活の面だけでなく、音楽でも魂のパートナーなのだとか。
ジーナ・アリスさんも、「ラン・ラン国際音楽財団」の一員として世界各地でチャリティー公演をしており、2,500人の子供にピアノを教えているそうです。
とても素敵なパートナーを得て、ラン・ランの今後の活躍に、益々期待してしまいますね!
題名のない音楽会 ランランの「ゴルトベルク変奏曲」「ピアノ界のスーパースターが20年かけて挑んだ曲を聴く音楽会」を観て
既にピアノ界のスーパースターと言われているにもかかわらず、ラン・ランは、どんどんとその活動範囲を広げていて、本当にどこにそんなパワーがと、驚くばかりです。
そして、チャーミングで人好きのするお人柄にも魅了されます。
次はどんな挑戦をしていくのか、ここまでなんて限界は彼にはきっとないのでしょうから。
人生、誰にでもさまざまなことが起きるものですが、どんなこともただあることとして、自身の捧げる道にパワフルに取り組んでいる姿に、パワーをいっぱいにいただきました!
「ピアノ界のスーパースターが20年かけて挑んだ曲を聴く音楽会」
楽曲紹介
♪1:「ゴルトベルク変奏曲」よりアリア
作曲: J.S.バッハ
ピアノ: ラン・ラン♪2:「ゴルトベルク変奏曲」より第4変奏
作曲: J.S.バッハ
ピアノ: ラン・ラン♪3:「アメリのワルツ」
作曲: Y.ティルセン
ピアノ: ラン・ラン♪4:「ラプソディ・イン・ブルー」
作曲: G.ガーシュウィン
ピアノ: ラン・ラン(出典:題名のない音楽会 公式サイトより)
偉人たちが遺した言葉音楽家として成長する上で、新たなステージに進むべき時が来たと思う。
~ラン・ラン
(出典:題名のない音楽会 公式サイトより)
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