題名のない音楽会で辻井信行がベートーヴェンの生誕250年に、3大ピアノソナタ「月光」「悲愴」「熱情」を熱演!

2020年9月5日と、9月12日の「題名のない音楽会」は、2週に渡って、辻井伸行(つじい のぶゆき)のピアノの演奏が披露されました。

辻井伸行は、今年、ベートーヴェンの生誕250年であることにちなんで、「3大ピアノソナタ」と言われる「月光」、「悲愴」、「熱情」に、彼自身がオリジナルの解釈からの曲名を付けて、演奏しました。

辻井伸行は、国内はもちろん、アメリカ・ドイツ・スイス、イギリス、ロシアなど、数多くの国々でリサイタルや、有名な指揮者やオーケストラと共演するなど、世界的に活躍するピアニストです。

今回は、そんな彼のコンサートを、テレビで見ることができる、ステキな企画でした!

また、彼は、初めての試みとして、2020年6月7日から4週にわたり毎週日曜日20時より、有料オンライン・サロンコンサートの開催にもチャレンジをしています。

この時のプログラムにも、ベートーヴェンの「三大ソナタ」の演奏がありました。

彼自身が解釈する「三大ソナタ」は、どんな音色なのでしょうか?

題名のない音楽会 辻井信行(つじい のぶゆき)のプロフィール

辻井伸行の” 辻”は、「二点しんにょう」ではなく、「一点しんにょう」が正しいのですが、通常のWEBサイト表記には無い字になります。

09年6月に米国テキサス州フォートワースで行われた第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールで日本人として初優勝して以来、国際的に活躍している。

1988年東京生まれ。幼少の頃よりピアノの才能に恵まれ、98年、10歳でオーケストラと共演してデビューを飾る。

2000年にはソロ・リサイタル・デビュー。05年には、ワルシャワで行われた「第15回 ショパン国際ピアノ・コンクール」に最年少で参加し、「批評家賞」を受賞した。

「ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール」優勝後は、日本の主要コンサートホールでのツアーをはじめ、アメリカ、ドイツ、スイス、イギリスなど、数多くの国々でリサイタルやオーケストラとの共演を行い、世界各国で圧倒的な成功を収めている。

11年はカーネギーホールの招聘でリサイタル、12年はアシュケナージの指揮でロンドン・デビュー、ヴァレリー・ゲルギエフの指揮でサンクトペテルブルクにデビュー。13年にはイギリス最大の音楽祭「BBCプロムス」に出演し「歴史的成功」と称賛された。

14年にはゲルギエフ指揮でミラノ・デビュー。同年ルーヴル美術館でのリサイタルは世界へインターネット中継された。

15年には佐渡裕指揮でウィーン・デビュー、ゲルギエフ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団とドイツ及び日本で共演。

16年はミヒャエル・ザンデルリンク指揮ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団とのドイツ・ツアー、ロンドンでのリサイタル・デビュー、ウラディーミル・アシュケナージ指揮でのシドニー・デビュー。

17年はアシュケナージ指揮でベルリン・ドイツ交響楽団にデビュー、ウラディーミル・ユロフスキ指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団と日本ツアー、パリのシャンゼリゼ劇場でのリサイタルが絶賛され、18年はゲルギエフやアシュケナージとの共演など世界的アーティストとの共演を数多く行った。

19年はロンドンのインターナショナル・ピアノ・シリーズやカーネギーホール主催のピアノ・リサイタル・シリーズへ出演し驚異的な成功を収め、ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団、ロビン・ティチアーティ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団、ヴァシリー・ペトレンコ指揮ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団などの一流指揮者との共演や国内外でのツアーを行っている。

07年よりエイベックス・クラシックスより継続的にCDを発表し2度の日本ゴールドディスク大賞を受賞、近年では、ヴァシリー・ペトレンコ指揮ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団との「グリーグ:ピアノ協奏曲、ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲」、ウラディーミル・アシュケナージ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団との「ショパン:ピアノ協奏曲第2番、ノクターン」、三浦文彰との「フランク&ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ」をリリース。作曲家としても注目され、映画《神様のカルテ》で第21回日本映画批評家大賞を受賞。

09年、文化庁長官表彰(国際芸術部門)。10年、第11回ホテルオークラ音楽賞及び第1回岩谷時子賞受賞。13年、第39回日本ショパン協会賞受賞。

(出典:辻井伸行オフィシャルサイトより)



題名のない音楽会 ベートーヴェンの生誕250年に、3大ピアノ・ソナタの演奏を聴く

ベートーヴェンの「3大ピアノ・ソナタ」と一般的にいわれるのは、「月光」、「悲愴」、「熱情」です。

ベートーヴェンには、「後期の3大ピアノ・ソナタ」といわれる、第30番ホ長調、第31番変イ長調、第32番ハ短調もあります。

今年は、ベートーヴェンの生誕250年にあたることから、「ピアノ・ソナタ」を聴く機会に恵まれそうですね。

「3大ピアノ・ソナタ」の内のひとつである、「悲愴」(ピアノ・ソナタ第8番ハ短調)は、ベートーヴェンの前期の作品で、1797年から翌年にかけて作曲されたといわれています。

この曲は、ベートーベンが作曲家としての名声を高めるきっかけとなった曲と言われています。

また、ビリー・ジョエルの「THIS NIGHT」を始め、ジャンルを超えて、世界中のアーティストがカバーする名曲でもあります。

「月光」(ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調)は、ベートーヴェンの弟子であり、恋人でもあったといわれる、14歳年下の伯爵令嬢ジュリエッタ・グイッチャルディに捧げられた曲、といわれています。

あまりにも有名で、私は最初のフレーズを聴くと、自動的に幻想的な月の光のイメージが湧いてきます。

恋人への想いが反映されているからでしょうか。心の奥底にじわじわとメロディーが染み入る感じがします。

「熱情」(ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調)は、20代後半には最高度難聴者となったベートーヴェンが、30代で生み出した数々の傑作の中の1つです。

そのタイトルどおり、ダイナミックな曲想に、ベートーヴェンの音楽への探求とでもいうのでしょうか。その迫力に圧倒される気がします。


題名のない音楽会 辻井伸行流ベートーヴェンの3大ピアノ・ソナタの解釈

番組で、辻井伸行は、ベートーヴェンのピアノ・ソナタの魅力をこう語っていました。

「彼のピアノ・ソナタは、生涯で32曲あって、作曲した時期によって初期、中期、後期の作品に分かれています。ピアノという楽器が進化している時代に書かれた作品なので、鍵盤全体を思考錯誤しながら使って音域を広げていっていることが、初期の作品と後期の作品を比較すると分かって楽しいです」

3大ピアノ・ソナタについては、非常に聴きやすいメロディーがたくさんあるので魅力的だ、と言っていました。

3大ピアノ・ソナタ「月光」「悲愴」「熱情」につけられた曲名のほとんどは、ベートーヴェン自身がつけたものではなく、出版社や音楽評論家などが、曲のイメージからつけたと言われています。

辻井伸行は、3大ピアノ・ソナタに曲名をつけるならば、「悲愴」は、『怒りと慰めのタイトル』、「熱情」は、『幻想曲嵐』、「月光」は、『かなしみ』と表現しました。

「悲愴」は、初版の楽譜が出された時には、既に曲名としてつけられていましたが、誰によるものなのかは定かではないとされていますが、ベートーヴェンの了解が得られている曲名なのではないかと推測されています。

辻井伸行が、「悲愴」を『怒りと慰め』としたのは、どんな曲のイメージからだったのでしょうか?

「第一楽章の出だしの重々しい和音で、ベートーヴェンの自分への“怒り”とも苛立ちのようなものがあるように感じます。第二楽章は胸を打つような美しいメロディーで、怒りから解放されて“慰め”を得ているように感じます。第3楽章は、“怒り”と“慰め”の2つのイメージ重なっているように感じます」
(出典:題名のない音楽会 2020年9月5日放映から)

辻井伸行が第二楽章を演奏すると、ナビゲーターの石丸寛二は、心がふわーっと軽くなるような、憤っていたものが、水面に例えると鏡のように静かになったように感じたとコメントしていました。

また、「熱情」を『幻想曲、嵐』と表現した理由を、辻井伸行はこのように言っています。

「曲全体に、嵐を感じる部分があったり、急に雨が降ったり、風が吹く様子や、雷の音の表現がされています。また、曲の途中に、幻想的で穏やかな部分もちりばめられているので、このタイトルにしました」
(出典:題名のない音楽会 2020年9月5日放映から)

「月光」は、ベートーヴェンによって、『幻想曲風ソナタ』と命名されていたそうです。

しかし、彼の没後、ドイツの音楽評論家で詩人である、L.レルシュタープが、”スイスのルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう”と表現したことから、これが広まったと言われています。

辻井伸行は、「月光」を『かなしみ』と命名した理由を、このように語っています。

「きれいな中に、もの悲しさや切なさ寂しさ、1人で何か寂しい思いをしながら色々と考えているイメージがあります。

第一楽章曲は、最初から最後まで同じリズムが出てきます。そこにも注目していただきたいです。自分自身どうしてこんなに今悲しいんだろうと思いながら、月を見たり、海辺で瞑想ている、そんなイメージを感じて欲しいです。

第二楽章は、第一楽章の悲しみから少し解放されて、軽やかになります。単調から長調になって、曲も明るく、踊るように楽しげで自然の中を歩いているイメージです。でも、決して悲しみを忘れているわけではありません。

第三楽章は、激しさがあります。第一楽章の悲しみとは違って、荒々しい波が押し寄せてくる感じがします。なんでこんな悲しい思いを自分をしているんだろう、と言うような苛立ちのような気持ちを感じる部分もあります。曲想も激しいし、指の動きも早いので、指の動きにも注目して聴いてもらいたいと思います」
(出典:題名のない音楽会 2020年9月12日放映から)

昨年(2019年)、辻井伸行はベートーヴェンのゆかりの地を巡る旅をしました。

ベートーヴェンの生まれ故郷のボンを訪れ、暮らしていた家や、オルガニストとして勤めていた教会などを訪ねました。

一番印象に残ったのが、ベートーヴェンが実際に使用していたピアノだと言います。

特別に触らせて貰えたと語る彼は、
「もちろん、もう音は鳴りませんが、何度も何度も鍵盤を叩いたと思われる指のくぼみの跡が残っていました。音楽家にとって、耳は命で、彼は晩年音が聞こえないことで辛い思いをしたのだと思いますけれども、色々試しながら振動だけで、よくこんなに素晴らしい作品が書けるな、と尊敬しています」と語りました。


題名のない音楽会 「辻井伸行がベートーヴェンの三大ソナタを弾く音楽会」を観て

久しぶりに辻井伸行の演奏を聞きました。

音が澄んでいて、どんなメロディーを弾いても、彼ならではの曇りない音色が聴こえるように感じました。

今年は、ベートーヴェンの生誕250年。

色々なピアニストによるベートーヴェンの「3大ピアノ・ソナタ」を比較したり、同じピアニストの演奏でも、その都度の表現の違いを楽しむのも面白いかもしれません。

また、聴くシーンもオンラインでの演奏や生演奏、CM、街中でなど、さまざまにあると思います。

色々なところで、ゲームのようにベートーヴェンの曲を見つけて、身近に感じてみるのも一興かもしれませんね。

 

楽曲紹介

(2020年9月5日放映分)
♪1:ピアノ・ソナタ第8番『悲愴』より第2楽章
作曲: L.v.ベートーヴェン
ピアノ: 辻井伸行

♪2:ピアノ・ソナタ第23番『熱情』より第1楽章
作曲: L.v.ベートーヴェン
ピアノ: 辻井伸行

(2020年9月12日放映分)
♪1:ピアノ・ソナタ第14番『月光』より第1楽章
作曲: L.v.ベートーヴェン
ピアノ: 辻井伸行

♪2:ピアノ・ソナタ第14番『月光』より第2楽章
作曲: L.v.ベートーヴェン
ピアノ: 辻井伸行

♪3:ピアノ・ソナタ第14番『月光』より第3楽章
作曲: L.v.ベートーヴェン
ピアノ: 辻井伸行

偉人たちが残した言葉

音楽は人々の精神から炎を打ち出さなければならない。  ~L.v.ベートーヴェン

私は人間のために精妙な葡萄酒を醸す酒神バッカスなのだ。  ~L.v.ベートーヴェン~



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