2020年8月24日放映の「グレーテルのかまど」は、プリン・ア・ラ・モード。(初回放送:2019年8月19日)
プリンにアイスクリーム、フルーツがたっぷりとのったプリン・ア・ラ・モードは、子どもにも大人にも、昔も今も、大人気のスイーツですよね。
色々なものがお皿の上にのっていて、ボリュームがあり、色合いのきれいなプリン・ア・ラ・モードを、どこから食べようかな、と迷いフォーク(迷い箸をもじった造語)をしながら、ちょこちょこつまみながら食べるのが、楽しいスイーツです。
プリン・ア・ラ・モード、と聞くと、海外からきたスイーツかと思いますが、なんと横浜生まれなのです。
開港から160年、文明開花の玄関口であった、戦後の港町横浜で生まれたプリン・ア・ラ・モードを番組では手作りしました。
家でも、色々なものをお皿にのせて、楽しんでつくることができるかもしれませんね!
グレーテルのかまど プリンアラモードが横浜で生まれた由来
プリン・ア・ラ・モードは、戦後間もない頃、連合軍に摂取され、上級将校の宿舎として使われていた老舗ホテルの厨房で生まれました。
番組では、ホテルニューグランドのチーフパティシエ熊倉弘士(くまくら ひろし)さんが、当時のの話をしてくれました。
ホテルでは、夜ごとアメリカさながらの華やかなダンスパーティーが、繰り広げられていました。
限られた材料しかない中、そのパーティーで出す食事を考えだすのに、シェフは苦心したといいます。
中でも頭を悩ませたのは、デザートだったとか。
滞在する将校の夫人たちに、なかなか満足してもらえなかったのだそうです。
将校夫人たちの要望をかなえるには、さまざまな課題があったそうです。
第1の課題は、なんといってもボリューム感。
プリン1つでは、満足してもらえなかったのです。
量を増やすだけでは芸がないと考えたシェフは、当時、プリンと同じようにぜいたく品であったアイスクリームと合わせることを思いつきました。
ボリュームも出る上に、味の相性もぴったりと合います。
第2の課題は、華やかさでした.
そこで、アメリカから送られてきた缶詰の果物や、フレッシュな果物を合わせて、彩りを添えることにしました。
また、フレッシュなりんごをアロー(矢)カット(飾り切り)で提供するなど、立体感や高さを出して、見た目を華やかにしたといいます。
「ウサギ型のりんご」の飾り切りが生れたのも、この頃といわれています。
課題の1,2を解決して、ほっとしたのもつかの間、ここでまた問題が発生しました。
全部を盛り付けるには、これまでの器では小さすぎたのです。
そこで、目を付けたのは、コルトンディッシュという高足のオードブル用の器です。
横長の形を生かして、たくさんの食材を美しく盛り付けることができました。
このような過程を通じて完成した、プリン・ア・ラ・モード。
お皿にのっているひとつひとつに、当時のシェフの、食べる人を楽しませよう、という想いがつまっているように思います。
それが、感じられるからこそ、今、私たちが食べた時も、わくわくと楽しい気分になるのかもしれないと私は感じました。
プリン・ア・ラ・モードという名前から、最初は海外から来たスイーツなのかと、私は思っていました。
実際、アラモード(à la mode)とは、フランス語で最新流行を意味します。
当時の最新流行のスイーツだったに違いないので、この名前がなんだかしっくりきますね。
似たようなスイーツに、パフェやサンデーなどがありますが、純粋に日本発のものは、アラモードなのだそうです。
グレーテルのかまど プリンアラモードの人気レシピ
番組では、“横浜の港”をイメージしたプリン・ア・ラ・モードを作っていました。
なので、「味わいの決め手」も、“浜っ子も大満足!”
まず、プリンをつくります。
掟: 滑らかさは譲れない!
カラメルを作る
番組では触れていませんでしたが、まずは、カラメルから作ります。
小鍋にグラニュー糖の1/2を入れ、弱火にかける。グラニュー糖が溶けてきたら残りを加え、ゆっくり混ぜながら全体を溶かします。
溶けたグラニュー糖がカラメル色になってきたら火を止め、水を加えます。
このとき鍋の上に、粉ふるいを置いておくと、カラメルがはねるのを防げます。
鍋ごとボウルにはった水につけて冷やして、余熱で色づくのを止めます。
スプーン一杯ずつ型に流し、固まるまで置いておきます。
プリン生地を作る
牛乳を鍋に入れます。
バニラビーンズに切れ目を入れて、種は出さずに牛乳に入れます。(滑らかなプリンを目指す為)
鍋を温め始めますが、温めすぎないようにしながら、次の作業を進めます。
卵を解いて、よくほぐします。
これがなめらかなプリンのポイントになります。
卵に、砂糖を入れて、温まった牛乳を少しずつ卵液に入れて混ぜます。
ここで砂糖を溶かしていきます。
温めすぎた牛乳を一気に卵液に入れたりすると、卵液が煮えてしまいますので、注意が必要です。
さらに、ザルでプリン生地を濾します。
プリン生地の表面の泡を、ペーパータオルや、スプーンで取り除きます。
滑らかなプリンにするのであれば、この手間を惜しんではいけません。
カラメルを入れたプリン形にプリン生地を静かに9分目まで注ぎ入れます。
バットにペーパータオルを敷き、型を並べます。
型の高さの半分までお湯を入れて、アルミホイルをかぶせます。
160℃に温めたオーブンで、40~50分焼きます。
やっぱりプリン・ア・ラ・モードのプリンは、昭和のちょっと固めで卵を感じるプリンですよね!
ですので、オーブンから出す前にプリンの形を揺すって、硬さを確認します。
表面全体が同じように揺れれば焼き上がりです。
あら熱が取れたら冷蔵庫で一晩おきます。
一晩冷蔵庫に置くなんて、ちょっと驚きですが、カラメルが馴染んで美味しくなるのだそうです。
プリンを型から出す方法が面白かったです。
掟:ぐるっと1回転!
掟の意味がよく分からなかったのですが、ヘンゼルがプリン型をひっくり返して置いたお皿を、少し斜めに持ったまま、ダンサーのようにキレの良いターン(一回転)をしたら!
なんと、お皿にプリンがポン!と出ているではないですか!
どうして???
なんでも、遠心力が働いて、プリン型とプリン生地の間に隙間ができて、それでプリンが出てきたのだとか。
これなら、プリン生地を傷めることなく、簡単に型から出せて良いですよね!
フルーツを飾る
掟:華やかに美しく
フルーツの飾り切りを美しく仕上げるには、切れ味の良いナイフの準備が、重要です。
色々な季節のフルーツ(オレンジ、キウイ、メロンなど)を添えます。
アイスクリームは、手作りしても、市販のものでもお好みで。
盛り付けのアレンジを自分好みにして、自分だけのお皿を作るのが、醍醐味かもしれません。
お子さんと一緒、家族や友人と一緒につくるのも、楽しいかもしれませんね。
【事前準備】
・オーブンを160℃に温めておく。
・湯煎用のお湯を沸かしておく。【材料】
プリン 直径7cmの型、4人分 他は作りやすい分量<カラメル>
グラニュー糖 75g
水 15ml<プリン生地>
牛乳 375ml
バニラビーンズ 1/3本
全卵 125g Mサイズ2.5個分くらい
グラニュー糖 75g<ホイップクリーム>
生クリーム 100g 乳脂肪分42%くらいのもの
粉砂糖 8g<バニラアイスクリーム>(作りやすい分量)
牛乳 250ml
生クリーム 75g 乳脂肪分42%くらいのもの
バニラビーンズ 1/4本
卵黄 60g Mサイズ3個分
砂糖 55g<プルーンの赤ワイン煮>(作りやすい分量)
ドライプルーン 12粒
赤ワイン 200ml
グラニュー糖 65g
オレンジの皮(国産) 少量 香りづけ。あればでよい<飾り用フルーツ>(季節のものをお好みで。以下は番組で使用したもの)
りんご 1/2個
メロン(赤肉) 1/4玉
メロン(青肉) 1/4玉
キウイ 1個
オレンジ 1/2個
パイナップル 1/4個
ドラゴンフルーツ 1/2個
さくらんぼ 4個 缶詰
ミント 4枝
飾り用チョコレート 4個 好きな形のもの(出典:NHK グレーテルのかまど レシピ~港町YOKOHAMAのプリン・ア・ラ・モード~より プリン・ア・ラ・モードレシピ監修 エコール 辻 東京 岡部 由香 先生)
グレーテルのかまど プリンアラモードは横浜で当時の味を伝承したおもてなしのスイーツ
番組では、戦後、横浜で生まれたスイーツが紹介されました。
まずは、洋梨のデザート。
アメリカの将校夫人から、缶詰の洋梨を美味しく食べさせて、というリクエストに応えてできたと言われています。
アメリカ人が、チョコレートソースを好むことを知っていたシェフは、洋梨と組み合わせることを思いつきました。
バニラアイスの上に、缶詰の洋梨を半分に切ってのせ、その上にチョコレートとホイップクリームを合わせて作ったソースをかけて、洋梨をサンドするデザートを考案したのです。
今でも、よく食べられるこの組み合わせが、当時、考え出されていたものだったなんて驚きです。
将校夫人たちも、喜んだに違いありませんね。
次に紹介されたのが、ラムボール。
これは、ケーキの切り落としを再利用して作られたスイーツなのだそうです。
当時は、焼き菓子やバタークリームのケーキが多く、日持ちがしたので、ケーキの切り落とし生地を何日かためてラム酒を入れ、食感を出すために、ナッツやクッキー生地などを加えて、チョコレートでコーティングしたのだそうです。
今でも人気のスイーツがこんな風に誕生していたなんて、驚きです。
最後はボストンクリームパイです。
アメリカの味が食べたい、と言う声に応えて、手に入る材料で再現したのだそうです。
本場ボストンのボストンクリームパイは、スポンジケーキの間にカスタードクリームを挟み、チョコレートでコーティングしたケーキですが、番組で紹介されたのは、バターの風味がリッチなスポンジに、カスタードクリームを挟んだシンプルなスイーツでした。
限られた材料で、今も引き継がれるスイーツを生み出した、横浜のシェフたちの知恵と工夫は、本当にすばらしいですね。
そして、驚くことに、プリン・ア・ラ・モードを始めとした横浜生まれのスイーツは、当時のレシピがそのまま受け継がれているのだとか。
当時から完成度の高いスイーツであったことも伺えますが、当時の味を大切に後世に伝えようとする横浜の気質のようなものを感じる気がします。
横浜で生まれたプリン・ア・ラ・モードは、今も大人気で、横浜のさまざまな場所で味わうことができます。
老舗洋菓子店や、かつて外国人居住地があった場所にあるレトロな雰囲気のレストラン・喫茶、老舗の果物店など。
プリンの形が丸ではなく長方形だったり、お皿の大きさがまちまちであったりなどのバリエーションはありながらも、当時のシェフの想いは外しません。
プリンとアイスクリームと果物がのっていて、華やかでわくわくさせてくれる、おもてなしの味わいのスイーツなのですね。
グレーテルのかまど「港町YOKOHAMAのプリン・ア・ラ・モード」を観て
プリン・ア・ラ・モードは、昔、デパートの屋上のレストランのディスプレイで、ひときわ目を引くデザートでした。当時はスイーツなんて言葉は使っていませんでした。
親にねだって食べた時の嬉しさは、今もよみがえります。
懐かしくて、でもその華やかさはいつの時代も廃れない、人の心をぐっとつかむこのスイーツの魅力は、人が求めてやまないものを詰め込んでいるところなのかもしれません。
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