2020年11月14日の「題名のない音楽会」は、「トップギタリストたちが集まる休日」。
村治佳織(クラシックギタリスト)、押尾コータロー(アコースティックギタリスト)、マーチン・フリードマン(ロックギタリスト)のトップギタリスト3人が、同じギターという名でありながら、音色から、演奏の仕方などまで、異なる特色を披露しました。
ギタリストとして、ソロ活動が多い3人は、共演自体が初めて。
「題名のない音楽会」ならでは、のチャレンジングな企画で、トップギタリストが、ジャンルの違うギターの奏法を学ぶ様子は、初心者そのもので、微笑ましいシーンでした。
トップギタリストが好きなフレーズは?何にあこがれを抱いて、ギタリストになったのでしょうか?
また、クラシックギター、アコースティックギター、エレキギター、それぞれどんな特徴があるのでしょうか?
題名のない音楽会 村治佳織、押尾コータロー、マーティ・フリードマンのプロフィール
村治佳織(むらじ・かおり)
クラシックギタリスト。3歳より父・村治昇の手ほどきを受け、10歳より福田進一に師事しています。
1992年にブローウェル国際ギター・コンクール(東京)及び、東京国際ギター・コンクールで優勝を果たし、1993年に津田ホールにてデビューリサイタル、同年、デビューCD「エスプレッシーヴォ」をリリースしています。
現在は、イタリア国立放送交響楽団の定期演奏会や、フランス ナント音楽祭に招かれるなど、世界で活躍をするギタリストです。
押尾コータロー(おしお・こーたろー)
アコースティックギタリスト。主に鉄弦のアコースティックギターの演奏をしています。
本名は「押尾 光太郎」(おしお こうたろう)。1968年2月1日生まれで、大阪府吹田市の出身です。
2002年メジャーデビューし、同年10月全米メジャーデビューを果たしています。
また、スイスの「モントルージャズフェスティバル」へは2002年から3年連続出演しています。
近年では、アジア各地での活動も拡げ、韓国や中国でのソロライブを開催しています。
ラジオでは、MBSでレギュラー番組「押尾コータローの押しても弾いても」に出演し、ソロギタリストとして、全国ツアーなどのライブ活動や、番組テーマ曲、CM音楽などの作曲も手掛けています。
Marty Friedman(まーてぃ・ふりーどまん
ロックギタリスト。“マーティ”マーチン・アダム・フリードマン(Martin Adam “Marty” Friedman)は、1962年12月8日 生まれ、メリーランド州ローレル(ワシントンD.C.近郊)出身です。
アメリカのヘビーメタルバンド“メガデス”の元メンバーです。
日本の音楽、特に演歌に興味を持ち、2004年より日本に移住して、ミュージシャンとして活動をしています。
題名のない音楽会 村治佳織、押尾コータロー、マーティ・フリードマンが、好きなフレーズと、クラシックギター、アコースティックギター、エレキギターの特徴は?
ソロ活動をしている3人が共演すること自体が、今回が初めてで、石丸幹二は、「異種格闘技的ですね」と評していました。
マーティンは、「クラシックギター、アコースティックギター、エレキギターは、全然違うもので、サックスとピアノ位の違いがありますね」と言っていました。
面白いですね。全く違う楽器、というくらい違うんですね。
そして、それぞれのギターの独自のイメージを、こんな風に表現していました。
「僕の勝手な解釈ですけど、村治さんは、フランス料理で、おしゃれなエレガントな感じ。押尾さんは、ちょっと男性らしい、ブラジル料理って感じ。僕は、完全にファーストフードって感じです」
表現が面白いですよね。そして、わかりやすい!
『3ギターズ・スペシャルメドレー』の演奏では、それぞれのギタリストが、ギターの特徴が分かる曲を選曲していました。
『3ギターズ・スペシャルメドレー』
村治佳織(クラシクックギター)演奏
R.ディアンス作曲 『タンゴ・アン・スカイ』押尾コータロー(アコースティックギター)演奏
押尾コータロー作曲 『GOLD RUSH』マーティ・フリードマン(エレキギター)演奏
マーティ・フリードマン作曲・押尾コータロー編曲 『UNDERTOW』
村治香織(クラシックギタリスト)が好きなフレーズ
村治香織の好きなフレーズは、ステージで、100回に届くくらい1番多く弾いているという『アランフェス協奏曲 第二楽章』(ホアキン・ロドリーゴが1939年に作曲)でした。
この曲は、ホアキン・ロドリーゴが、アランフェスを訪れた際に感じた歴史の憂愁を込めて、作曲したと言われ、曲の初演時は、スペイン内戦終結の間もなくで、平和への祈りと共に、人々を癒したと言われています。
村治は、ロドリーゴの深い想いに、感動すると言っていました。
そして、クラシックギターの魅力は、単旋律でも歌わせることができること、と言っていました。
また、ビブラート(注1)は、弦を押さえた左指を、横に揺らすと、深みのある音が出るのが特徴です。
(注1)ビブラート(伊: vibrato):演奏・歌唱において、音程を細かく上下させて、震えるように音を響かせること。
この曲を、マーティ・フリードマンがエレキギターで弾くと、同じ旋律でありながら、全く世界観の違う曲になりました。
そして、エレキギターのビブラートのかけ方は、クラシックギターと違い、弦を押さえた左指を縦に震わせるのです。
同じギターでも、指の使い方も違うことに、驚きました。
押尾コータロー(アコースティックギタリスト)の好きなフレーズ
押尾コータローは、長渕剛作曲の「夏祭り」を挙げていました。
80年代のギター少年たちが、腕を競い合ったフォークソングの、「スリーフィンガー奏法」(注2)に押尾も例外なく虜になったと言います。
(注2)スリーフィンガー奏法:親指、人差し指、中指で弾くフォークギターの代表的な奏法
この奏法は、フォーク独特のものだそうです。
アコースティックギターの魅力は、ナイロン弦のような美しい音は出ないのですが、カントリー&ウェスタンのようなシャープなジャリっとした音が出せるところと言っていました。
マーティ・フリードマンは、「サイモン&ガーファンクル(Simon & Garfunkel)みたい。アコースティックは美しいですね。人のタッチが感じられる」と言っていました。
また、「エレキギターは、単音のメロディーが多いけれど、アコースティックギターは、メロディーと伴奏が同時に弾けるから、全く違う楽器」とも。
押尾コータローが言うには、クラシックギターは、オーケストラ、アコースティックギターは、ロックバンド系の伴奏ができると、早速、エレキギターと即興のセッションが始まっていました。
演奏家は、言葉だけでなく、音楽ですぐに語り合えるんだな、と感動しました。
マーティ・フリードマン(ロックギタリスト)の好きなフレーズ
マーティ・フリードマンの好きなフレーズは、クイーン(QUEEN)のギタリスト、ブライアン・メイの「ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)」のソロの部分と言います。
マーティは、QUEENの場合、ギターソロは曲の大事な部分になっていて、聞いた瞬間に、「あの人だよ!」という存在感があると言います。
だから、お手本にしていると言います。
ここで、石丸幹二が、マーティの見た目が、ブライアン・メイに似ていると言うと、マーティは、首を振って、ロックのユニフォームの1つが、“ロン毛”だからと言います。
そして、「銀行で働いているとは、思わないでしょ?」と。
ロックのユニフォームとは、よく言ったもの。
確かに、ロン毛が多いかも、、、トレードマークなのね。
銀行員で、こんなロン毛にしている人は、見たことがないし。
石丸幹二が、ギタリストのイメージを「みんなスリム」と言ったところ、
「まぁ、みんな貧乏だから食べてないから」とマーティンが答えて、笑いが起きると、
押尾コータローから、こんな意外な話が。
「大先輩のギタリストCharさんは、すごく外見にこだわる人で、急に僕のお腹をぐっとつかんで、お前最近太っただろうとか、ケータリングのお菓子を食べようとしていたら、お前、最近顔が丸くなってないかとか、うるさいんですよ」
笑えます。やはり、みなさん外見に、気を遣っているのですね。
題名のない音楽会 村治佳織がエレキギターに、押尾コータローがエレキギターとクラシックギターに挑戦!?
プロがジャンルの違うプロにギターのテクニックを教わるコーナーでは、プロらしからぬ素人として、教えを乞う一面が見えて、ギター教室さながらでした。
押尾コータローが、マーティンに、ピックの使い方を教わる
押尾コータローは、爪をジェルネイルで固めているので、ピックは必要ないのだけれども、ずっと使えないって言うコンプレックスがあったと言います。
・はじめてのピッキング練習法⓵
基本となるパワー・コード(注3)を弾いてみよう
(注3)パワー・コード:2音で構成されるロックの定番コード
・はじめてのピッキング練習法⓶
ピックを人差し指と親指ではさみ、弦をひっかくイメージで
・はじめてのピッキング練習法③
まず上から下の一方方向だけで練習を!
マーティンから、指導を受けて、出来てますよと、太鼓判を押されていました。
村治香織が、マーティンに、チョーキングを教わる
村治香織は、自前のエレキギターを持ち込み、チョーキング(注4)のやり方をマーティから教えてもらっていました。
(注4)チョーキング:アームを使わず、弦を押し上げて音程を変える奏法
トレモロアームで音程を変えることができるのですが、無い時は、左手で弦を押し上げて、音程を変える奏法、チョーキングで音程を変えます。
村治香織は、マイエレキをスタジオに持ち込んでいました。
そのエレキギターは、日本が世界に誇るジャズギタリスト渡辺香津美のモデルで、シックなブルーが印象的でした。
村治は、重いといいながら、肩にベルトをかけて構えると、なかなかの姿、お似合いでした。
・はじめてのチョーキング練習法①
他の弦を触らないようにピックして、左手の指先で弦を押し上げる
村治は、左手の指、2本を使わないと弦が持ち上がらない、と声をあげていました。
マーティに、3本の指でやってみることを勧められて、チャレンジすると、何とか音程に変化が。
弦が、指先に食い込んで跡になり、結構指先の力が要るし難しいと、村治は言っていました。
押尾コータローが、村治香織に、トレモロ奏法を教わる
「アルハンブラの想い出」のトレモロ奏法(注5)は、細かくてすごく繊細な奏法で、爪が引っかかって上手くできないと押尾は言っていました。
(注5)トレモロ奏法:薬指、中指、人差し指で弾くクラシックギターの奏法
村治は、均等に音を出すコツを伝授してくれました。
・はじめてのトレモロ練習法⓵
中指、薬指、中指、人差し指で練習するとフォームが安定
・はじめてのトレモロ練習法⓶
慣れてきたら、最初の中指と同時に親指をつけます。
中指をつけることでホームが安定すると村治は言います・
押尾は、難しいといいながら、「今テレビを見てる人、も目から鱗じゃないですかね。ギター教室だなぁと思って、感動しましたよ」と言っていました。
見ていて、楽し気に学んでいる姿に、プロほど、素直に学ぼうとするのだなと思いました。
題名のない音楽会 村治佳織、押尾コータロー、マーティ・フリードマンのギターの保管方法は?
村治香織のギターの保管場所は、実家の廊下。ボックスに入ったまま整然と並んでいました。
13本くらいギターを持っている中で、いつも使っているのは1、2本だそうです。
10年ぐらい弾いていないものもあるのだとか。
出番を待っている熟成中?のギターがいるとのことでした。
クラシックギターは、うまく使っていると、40年~50年くらいで、弾きごろになると言われているのだそうです。
ちなみに、村治佳織が、今、メインで使っているギターは、92年製で、まだ若いのだそうですが、デビューの時も一緒だったということで、一緒に成長していけたらいいなと思っていると言います。
思い入れの深いギターなのですね。
押尾コータローのギター保管場所は、事務所の一角の楽器庫。
40本あまりのギターが、ところせましと、でもいっぺんにはおけないので、分けて保管されていました。
どこに何があるのかが、分からい状態で、ケースを開けてみて、何かが分かると言っていました。
と、おもむろに開けたケースから顔を出したのは、愛媛県、亀岡産のギター。
「やっぱり、加湿器とかをつけて、管理したほうが良いのでしょうけど、結構ほったらかしなところがあって。声が聞こえてくるんですよね。ギターから」と押尾は言います。
どんな声が?
と思っていると、
「いいよなぁ、あいつばっかり」と、ギターたちの妬ましさのこもった声なのだとか。
使うギターが決まってしまうんですね。
マーティ・フリードマンのギター保管場所は、斬新でした。
自宅にあるのは、15本くらいで、ほとんど自宅では弾かないので、あまり置いていないと言っていました。
他の国で、ライブするときに、ギターを持たないで、出かけていくのだそうです。
どういうこと?と聞いていると、なんと!
マーティが、メインで使用しているギターは、ジャクソンのマーティー・フリードマンモデルなのですが、全世界どの店に行っても、全く同じスペックのものが手に入るから、持っていく必要がないのだとか。
なるほど!!なんて合理的!
どこでも手に入るシステムを構築しているってすごくない!?
メンテナンスも、技術者の方に任せているために、自分で弦を張り替えることもなくて、弦を張るのは下手なのだと言います。
この言葉に、村治香織は、クラシックギターは、自分で張り替えないといけないので、羨ましいと言っていました。
いやいや、同じギターという名でも、テクニックだけでなく、扱い方に至るまで全然違うことに、驚きました。
題名のない音楽会 「トップギタリストたちが集まる休日」を観て
クラシックギター、アコースティックギター、エレキギター、音色は違うと思っていましたが、弦を弾いて音を出すこと以外、全く異なる楽器と言っていいくらいなのですね。
プロでも、他のジャンルのギターは弾けるわけではないんですね。
ギターの奥深さを感じました。
楽曲紹介
♪1:「3ギターズ・スペシャルメドレー」
クラシックギター: 村治佳織
アコースティックギター: 押尾コータロー
エレキギター: マーティ・フリードマン♪2:「ボレロ」
作曲: M.ラヴェル
編曲: 押尾コータロー
クラシックギター: 村治佳織
アコースティックギター: 押尾コータロー
エレキギター: マーティ・フリードマン出典)題名のない音楽会 tv asahi 番組 webサイト
偉人たちが残した言葉
ライブは一回きりのもの。毎回が新鮮であることとみんなが聴きたいものを聴かせることのせめぎあいだ。~ギタリスト ブライアン・メイ~
出典)題名のない音楽会 tv asahi 番組 webサイト
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