情熱大陸の自在置物の満田晴穂(みつた はるお)が個展開催!自在置物でオニヤンマに挑戦!

「自在置物工芸」(じざいおきものこうげい)という伝統工芸をご存じだろうか?
江戸時代中期以降、太平の世で職を失った甲冑師(かっちゅうし)によって生み出されたと言われている伝統工芸で、明治以降、一旦途絶え、作品も海外に渡っていたために、国内では日の目を浴びてこなかったといわれています。

自在置物とは金属工芸品で、鉄や銅、銀、赤銅(金と銅の合金)、四分一(銀と銅の合金)を主な素材としています。そして、金属を自在にあやつり、虫、蛇、甲殻類から龍まで、さまざまな生き物の姿を極限まで近づけるだけでなく、本物と同じくらいの動きも再現するという匠の技が集結した置物なのです!

本物で動くところは、すべて動かすことができるのが、自在置物が自在たる所以です。

その自在置物の技術を国内で唯一継承している作家、満田晴穂(みつた はるお)が、2020年7月19日の「情熱大陸」に登場しました。

満田晴穂は、どんな人なのでしょうか?
何故、自在置物という、一般にあまり馴染みのない伝統工芸を継承する人生を、選択したのでしょうか?

情熱大陸に出演した自在置物作家、満田晴穂(みつた はるお)の自在置物の販売価格はいくら?

満田は、工芸藝術の企画展からも声がかかって、出展する機会も多いとか。
番組では、企画展を訪れて、満田の作品を初めて観た客の様子が映しだされていた。
「これ本物じゃないよね。作り物ですよね?」
「何でできているの?紙?」

金属だけで形作った、満田の超絶技巧(ちょうぜつぎこう)。
金属を10分の1ミリ単位までこだわって加工し、本物そっくりの生き物として命を吹き込んでしまう彼のすごさを感じます。

企画展に展示した作品は売り物でもあります。

本物と見紛う大スズメバチに、買い手がつきました!35万円。
ポンとお支払いをされている姿に、彼の作品のファンかと思いましたが、何と一見(いちげん)さま。
聞けば、虫好きのお孫さんへのプレゼントとか。
きっと気に入ってくれるとの確信があったのでしょうね。
そして、お孫さんも、この匠の技がどんなものかを知ったら、35万円どころではない、永遠の命を紡ぐこの虫の価値に感動されるだろうな、と思いました。

自在置物で昆虫、オニヤンマに満田晴穂が挑む!

自在置物のモチーフは、甲殻類(こうかくるい)や龍などの幻獣(げんじゅう)、昆虫、魚、鳥、日本中のありとあらゆる生き物が使われます。

幼いころから昆虫が大好きだったという満田が、ずっと制作してみたいと思っていたオニヤンマに挑戦していました。満田は、虫は全部の形に意味があるように感じて工芸的で、機能美なのがすごく面白いと言っています。

作る前にモチーフをよく観察して、正確に姿かたちを図面に起こしていきます。
作品を原寸大で制作するので、ノギスでミリ単位まで測ります。

そして、次にモチーフを分解して、羽の付け根はなどの細部の構造なども見極め、どのように動くかをじっくりと研究するのです。

まだ、金属に触ってもいない状態にもかかわらず、細かい作業に圧倒されます。

オニヤンマで羽の材料には、薄い銅板を使い、下書きした極細の線だけを残すようにして、ひたすらタガネを打ち続けていました

髪の毛1本より細い線を再現するのは、気の遠くなるような作業で、うっかり線を潰してしまえば、一からやり直しになってしまいます。

この作業だけで2週間を費やしていました。
金属の板から、実物のオニヤンマの羽に近づけていくためには、少しの妥協も許されません。

「あーしんど」と満田はタガネを打つ手を途中で止めて、大きく伸びをしていました。
首の痛みは職業病で、10分に1度は伸びをするように医師から指示されているそうです。
果てしなく地道な作業風景に、やっぱり作るのは大変なんだ、と職人の辛さや忍耐みたいなことに私の気持ちは傾いていましたが!

「自在置物ってどこが面白いですか?」の取材スタッフの質問に、
「僕からしたら、面白さしかないんだけどなぁ」と答えた満田の言葉に、自在置物に魅せられた作家の魂を感じました。

「ちなみにライバルは?」
「モチーフしかないですね」
何て厳しい状態だろう!誤魔化しがきかない、孤独な闘いがにじみでます。


自在置物に蛇(へび)をモチーフにした満田晴穂と妻

妻、恵理さんにとって、夫、満田晴穂は愛すべき変人なんだそうです。
普通ではちょっとありえないエピソードなのですが、このご夫婦のやり取りは、本当に微笑ましいのです。

ある夜、満田晴穂は、コンビニに行ってくると出て行って、暫くすると、ガサガサとビニール袋の音をさせながら帰ってきたそうです。
妻の恵理さんは、アイスでも買ってきてくれたのかな、とウキウキ待っていたのですが、
「蛇を拾った。ちょうどきれいに(車に)轢(ひ)かれていたんだよねー」と言って、その袋をそのまま冷凍庫に入れようとしたそうです。
恵理さんは当然、「やめて」と止めたとか。

ぞわーん、鳥肌が。。。 蛇が冷凍庫から出てきたら、卒倒してしまいます。。。
私だったら、「やめて」じゃ収まらないでしょう。

そして、この後の会話が、この夫婦の微笑ましいところ。
夫「鶏肉だったら冷凍庫に入れるじゃん」
妻「だって、羽とかついてないじゃん。羽がついてたら、冷凍庫に入れないよ」
夫「そうなのか?」

そんなものかと、満田は直ぐにが専用の冷凍庫は注文したそうです。

また、満田が作る作品について、
妻「作品を作るのに、キマワリやガムシみたいなすごく地味な虫を選んだりするのよね。何でこれを作ったの?」
夫「かっこいいから」
妻「私も虫が好きだから、かわいいのは分かるんだけど、これ売れるの?」
夫「めっちゃ売れなかった」
夫・妻「ははは」

4歳になる一人娘とのスキンシップや、夕食前のひと時に一緒に遊ぶことを、満田は何より大事にしています。幸せこそが、エネルギー!
満田の孤独な創作を支えているのは、温かな家族なのだな、と実感します。

厳しい匠の世界が、満田の生活からは、ギスギスと感じないのは、技を楽しみながら極め、愛溢れる生活がパワーとなっているからに違いないと私は思いました。


自在置物作家の師を訪れ、即日弟子入りした満田晴穂

満田晴穂は、1980年鳥取県の生まれ。
4浪の末に2002年東京芸術大学美術学部工芸家に入学して、自在置物を授業で知りました。

満田は、自在置物は動くし、金属でさまざまなギミックがある上に、生き物がモチーフと自分が好きなものが全部入っていて、これだ!と思ったのだけど、最初は美術館のガラスの向こうにあるイメージで、自分との距離を感じていたそうです。

その距離を一気に縮めたのは、今は亡き師匠、冨木宗行さんとの出会いでした。

満田は、懐かしそうに当時を思い出しながら語っていました。
「訪ねて行って5時間位その工房にいたかなぁ。そしてその日のうちに弟子にしてください」と申し入れました。

そのまま京都に居座り、見よう見まねで鈴虫を作って、師匠を驚かせたそうです。
人生が決まった瞬間でした。

その時、師匠である冨木さんは、娘の岐加さんに、満田さんのことをこういったとか
「あいつ、作って帰りよった」
「カチッと何かを作りあげて見せたのは、満田さんだけだったから、父はそれがうれしかったのだと思います」と彼女は言っていました。

満田は、自分の役目をこんな風に言っていました。
「僕は自在置物の技術とか文化を師匠から受け継いで、預かっている状態。それを次の人に渡すまでが僕の仕事」

満田が挑戦していたオニヤンマ。
頭の部分の口の中と顎を組み合わせていく時に、唇の中にあるとげがぶつかって、オニヤンマの口が閉まらない。
「普段(オニヤンマ)はどうしてるんだろう?」
細かい細工に誰も気づかない可能性のほうが高く、妥協するのはたやすいが、よりリアルな動きを満田は追求して、完璧を目指していくのです。

満田はかつて師匠から学んだ教えを守り抜いてきました。
「何十年何百年後に修理されたときに恥ずかしくない仕事をしろ。修理の時は全部バラされて分かってしまうぞ」

満田は言います。
「その言葉はすごく意識していますね。この時代はこの程度だから、ここを動かさないようにしたんだって言われたら、あの世でもむかつきそうじゃないですか」

オニヤンマは4ヶ月かけて完成しました。
「天才だよ。めっちゃかっこいいもん」
少年のように喜ぶ姿に、またひとつ技を極めた達成感を私は感じました。

以前、満田は某セミナーで彼の匠として貫く想いを若者に伝えています。

自在置物はただ動けば良いというものでもなくて、置物なので置いた時に一番美しく見えるようにする必要があります。だから、組んだ後のチェックや構造などには相当時間をかけます。そして、ごまかしがないか客観視することを大切にしています。

彼の謙虚さと、リアリティを極める貪欲さが伺え、それをあますことなく次の世代に伝える役割を果たそうという継承者としての責任も感じました。


自在置物の満田晴穂の個展「JIZAI 満田晴穂展」(2020年7月22~28日@日本橋三越)に行ってきました!自在置物のオニヤンマの価格は?(情熱大陸)

情熱大陸を見て、初めて自在置物という工芸品を、私は知りました。
そういえば、昔、祖父母の家に金属の鯉がいて、カチャカチャ動くのがおもちゃみたいだと思って触った記憶があります。今思えば自在置物だったのですね。

満田晴穂の今を楽しむ少年のような眼と、時代を超えて自在置物を見つめる眼を併せ持つ不思議な魅力に私は、わくわくさせられました。

折しも、「JIZAI 満田晴穂展」が、2020年7月22~28日で日本橋三越で開催されました。
超絶技巧の満田晴穂を体感するチャンス!と、私は早速行ってきました。

もう、感動しました!
初めて作品を生で見て、テレビやWEB画像では今一歩よく分からなかった、本物感に圧倒されました。
本当に、これが金属でできているのだろうか、と思うほどに本物なのです。
蜘蛛や、ゲジゲジの足に生えた髭(ひげ)のような細かい毛や、クツワムシの羽の筋、質感までもが、精巧に写し取られていて、まるで昆虫の標本のようでした。

作家の満田晴穂さん、いらっしゃいました!
わぁー本人だ!TVで見たとおり。
マスクをしていましたが、すぐに本人と認識できました。
そして、芸術家(職人のたまご?)と思われる人の質問に答えていました。

作品だけでなく、家族を大切にしながら職人を続ける作家の生き方にも、色々と伺いたいことがあるのだろうと推察しました。

お客さまは、若い人が中心。昔、昆虫好きだったのであろう20代の若者、あるいは、藝術を志す若者なのかもしれません。作家と同じように顔に髭を生やしている人もいました。
女性も男性もいました。

TV放映後でもあったせいか、作品が展示されているコーナーへの立ち入りが、3密を避けるための入場制限で、少し待たされました。

30点ほどあった作品は、どの作品もすばらしく、何回も見て回ってしまいました。

ありました!オニヤンマ。価格は、770,000円(税込)。
ラッキーセブンが並ぶこの価格にも、演出があるかも、と思えてすごく納得しました。

適度な人数に保たれたコーナーで、心行くまで作品をじっくりと見ることができて、写真も撮りまくり大満足でした。

昆虫が好きなわけではないのですが、急に親しみを感じてしまったのは、作家による魔法なのでしょうか?

まだ、私は画像をあげることが許されないので、撮影した画像をここにアップできないのが残念です。。。

もし機会があれば、満田晴穂の個展に行かれることをお勧めします。
感動は間違いなし!
それに、後世に名を残していくであろう作家の作品に、リアルタイムで対面できる貴重な機会かもしれないですしね!

「JIZAI 満田晴穂展」
2020年7月22日(水) ~ 2020年7月28日(火)
日本橋三越本店 本館6階 美術工芸サロン


自在置物作家 満田のプロフィール

満田 晴穂 (Haruo MITSUTA)

1980  鳥取県に生れる。就学期を千葉県我孫子市で過ごす
2002  東京藝術大学美術学部工芸科入学
(授業の一環として実施された古美術研究旅行で自在置物師・冨木宗行と出会い、自在置物作
家を目指す)
2006   東京藝術大学美術学部工芸科卒業
2008   東京藝術大学美術研究科修士課程彫金研究室修了  横浜市にて活動

【個展】
2017  「JIZAI」ラディウム-レントゲンヴェルケ(東京/2013、2015にも開催)
2016  「JIZAI」日本橋三越本店本館(東京/2010、2012、2014にも開催)
2010  「自在」ラディウム-レントゲンヴェルケ
2006  「満田晴穂 展」ギャラリールポリエ(東京)

【グループ展】
2017
「驚異の超絶技巧!―明治工芸から現代アートへ―」三井記念美術館(東京)
「ニッポンの写実 そっくりの魔力」函館美術館(北海道)豊橋市美術博物館(愛知)奈良県
立美術館(奈良)
「金工の深化-Evolution of Metal Works-」和光本館(東京)
「カオスモス5 一粒の砂に世界を見るように」佐倉市美術館(千葉)
「今様」松濤美術館(東京) 2016
「isotope Ⅱ」ラディウム-レントゲンヴェルケ 「半肆半」スパイラル(東京)
「俊傑 ~巧術其之柒」ギャラリー点(石川) 「-未踏への具象-ざ・てわざ」日本橋三越本
店本館
「蜘蛛の糸」豊田市美術館(愛知)
「今様 IMAYŌ: JAPAN’S NEW TRADITIONISTS」ハワイ大学ギャラリー、ホノルル美術館
(アメリカ)【企画:John Szostak】
「融合する工芸-旅に出たヤドカリのはなし」大阪高島屋(大阪) 2015
「濫觴~巧術其之陸」ギャラリー点 2014
「縹渺~巧術其之伍」ギャラリー点 「isotope Ⅱ」ラディウム-レントゲンヴェルケ
2013
「溶ける魚-つづきの現実」京都精華大学ギャラリーフロール(京都)
「韜晦~巧術其之肆」スパイラル 「六本木クロッシング2013 アウト・オブ・ダウト」森美
術館(東京)
「アート昆虫ワールド」高崎市タワー美術館(群馬) 2012
「蠱惑~巧術其之参」スパイラル 2011
「手練~巧術其之貳」スパイラル 「掌10」ラディウム-レントゲンヴェルケ
2010
「ネオ・リアリズム」Bunkamuraギャラリー(東京)
「手数系」AKI GALLERY(台北、台湾) 「巧術」スパイラル
2009
「メークリヒカイト II」ラディウム-レントゲンヴェルケ
2008
「市民のための美術コレクションケア展」千葉市美術館9階市民ギャラリー(千葉)
「東京藝術大学修了制作展」東京藝術大学大学美術館(東京) 2007
「010 STUDIO EXHIBITION」010 Gallery & Studio(茨城) 「第2回藝大アートプラザ
大賞入賞作品展」藝大アートプラザ(東京)「いきもの展」渋谷東急本店(東京) 2006
「全日本 金・銀創作展」GINZA TANAKA HALL(東京) 「東京藝術大学卒業制作展」東
京都美術館(東京)
2004
「24_3+K」東京藝術大学オープンアトリエ(東京)
2003
「23_3+K」東京藝術大学学生会館(東京)

【受賞歴】
2017 「平成28年度日本文化藝術奨学金」において「第8回創造する伝統賞」受賞
2008   「第48回日本クラフト展」において入選
2007   「第2回藝大アートプラザ大賞」において大賞受賞
2006     東京藝術大学の成績優秀な工芸学生を対象とする原田賞奨学基金を受賞
「全日本 金・銀創作展」において開催委員会会長賞受賞

(出典:満田晴穂と自在置物標本箱のProfileより)

 


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