2020年7月18日の「題名のない音楽会」は、「高嶋ちさ子のわがまま音楽会~ディズニーのファンタジア編」。
先週の「高嶋ちさ子のわがまま音楽会~ディズニーキャラクターソング編」に続いて、ディズニーがテーマです。
映画「ファンタジア」は、クラシックの名曲に、セリフのない革新的なアニメーションを合わせ、クラシック音楽をエンターテインメントにした、ウォルト・ディズニーの最高傑作といわれています。
高嶋ちさ子が、この「ファンタジア」を取り上げた理由をこんな風に言っています。
「ウォルト・ディズニーは「ファンタジア」を作るとき、ただ音楽だけを聴いて、音楽に合わせて自分の好きな映像を作れとオーダーしたらしいんです。自由に作ることができたっていうのは良いですね。だから私も自由にアレンジして!」
石丸幹二も言っていましたが、クラシック音楽は何かと型にはめられて自由が制限されているイメージです。
ウォルト・ディズニーは、映画「ファンタジア」で、映像だけでなく、クラシック音楽の新たな可能性の扉も開いたのではないかと、私は思いました。
「題名のない音楽会」に出演の高嶋ちさ子(ヴァイオリニスト)は、ディズニーファンタジアの”ライブナビゲーター”だった
なんと、高嶋ちさ子は、2015年、2016年と「ファンタジア」の”ライブナビゲーター”を務めていたんです。
その時の彼女の動画がYou Tubeで見ることができます。
彼女自身も、そして彼女の息子たちも「ファンタジア」にのめり込んで観たとか。大人から子どもまで夢中にさせる魅力があるんですね。
高嶋ちさ子は、「ファンタジア」の魅力をこう語っています。
「ファンタジア」には幻想的で、ちょっと哲学的にも思える映像もあれば、遊び心があるものや、ホロッとさせるものもある。それがショートフィルム感覚でどんどん出てくるので、見ていて飽きません。音楽がときには効果音になり、ときには美しいメロディで映像に華を添える。音楽の力ってすごいなと思わせると同時に、ディズニーのクラシック音楽に対する敬意や愛が感じられます」
そのディズニーに敬意を表して、番組では、「ファンタジア」の名曲を、高嶋ちさ子が自由な発想で“高嶋流エンターテインメント”に仕立てて演奏しました。
「題名のない音楽会」で、高嶋ちさ子がディズニーファンタジアを高嶋流エンターテインメントでアレンジ!
高嶋流エンターテインメント その1~演奏しながら魔法に挑戦
P.ディカス作曲「魔法使いの弟子」は、ゲーテの同名の詩を元に作曲されています。
映画「ファンタジア」では、魔法使いの弟子・ミッキーが師匠の目を盗み、箒に水くみをさせようと魔法をかけるのですが、魔法の解き方が分からず大失敗する物語になっています。
慌てるミッキーと、まるで鬼と化したかのような箒の映像と、魔法を思わせる少しミステリアスで不思議な雰囲気の曲がマッチするこの物語の“高嶋流エンターテインメント”とは?
高嶋ちさ子が、演奏前に言うには、
「演奏中に、私が魔法使いになって弟子に魔法をやらせようと思います。これからは、弾くだけじゃダメなんです。エンターテインメントですから」
どんな演出があるのかドキドキしていると、演奏中に、長石篤志(ヴィオリスト)が前に進み出て、ヴィオラの弦を弾いて「ドド、レレ、ミミ?」と自分の耳に手をやると、耳がいきなり大耳になる⁈ んん⁈
次に、江口心一(チェリスト)が赤いスカーフを闘牛士のようにひらめかせながら前に。そして、スカーフの端を巻き巻きしていたら、(よいしょっと)スティックが出ました!観ていてハラハラしました。。。
そして、最後に高嶋ちさ子は、白いスカーフから白い鳩を登場させました!(拍手)
楽器を演奏しながら手品を披露する演奏者の緊張感に、観客はドキドキを楽しみ、そしてこっけいな手品に聴衆も他の演奏者たちも思わず「くすっ」と笑いがでます。
バックの音楽が人の気持ちをより開放させて、すなおに楽しくさせるように私には、感じられました。
これは、「ファンタジア」を観た時、観客が「くすっ」と笑えるのと共通しているのかもしれない、と私には思えます。
さすが、エンターテインメントに長けた高嶋ちさ子、「ファンタジア」の本質を掴んでいる!
長石篤志 Atsushi Nagaishi(ヴィオリスト)
大分県出身。4歳からヴァイオリンを始める。フィレンツェへの留学を機にヴィオラへ転向。フィエーゾレ音楽院にてアントネッロ・ファルッリに師事する。帰国後は東京に拠点を移し、東京フィル・群馬交響楽団・仙台フィル・日本センチュリー響・浜松フィル等オーケストラのゲスト首席として出演。また、ゲーム音楽など幅広いジャンルのレコーディングにも参加。日本クラシック音楽コンクール全国大会審査員
高嶋流エンターテインメント その2~のりものに乗って、より優雅に踊りながら演奏
A.ポンキエリ作曲「時の踊り」は、オペラ「ジョコンダ」の一幕で演奏されるバレエ音楽です。
映画「ファンタジア」では高音をダチョウ、低音をカバと音の高さに合わせて様々な動物がコミカルに踊るシーンとして描かれています。ではこの曲をどんな高嶋流エンターテインメントにするのでしょうか?
高嶋ちさ子「今日は偶然にもメンバーにカバがいるんですよ」
石丸幹二 「えっ?どこですか?誰ですか?」
高嶋ちさ子「(江口心一(チェリスト)のこと)先週はイボイノシシ(ブンヴァ)でしたが。上手に
踊るためには、魔法の絨毯系のものがあったほうがよいかと思いまして。例の“あれ”を
またご用意しました」
2020年1月18日に放映された「題名のない音楽会」では、江口心一(チェリスト)は、のりものに乗って早や弾きをする超絶技巧を披露しました。その時ののりものに乗って、今回は、優雅にダンスをしました。
のりものに両足で乗って、上体のバランスをとりつつ、縦横無尽に走りながら、繊細な音色でチェロを奏でている江口心一(チェリスト)の表現力はすごいですね!
演奏後の石丸幹二とのやり取りに笑えましたが、その技量がどんなにすごいことなのかも伺い知れました。
石丸幹二 「江口さん、チェロをおなかに乗せている状態なんですか?」
江口心一 「おなかではないです。チェロの弦を巻いているペグを、首の後ろに引っかかっていて、
それで止まっているだけ。チェロを弾く姿勢は通常前かがみですが、こののりものに乗
って弾くと体が反った状態なので、メチャメチャ弾きづらい」
江口心一 Shin-ichi Eguchi(チェリスト)
東京都交響楽団の副首席チェロ奏者。3歳からヴァイオリンを始め、8歳でチェロに転向。1991年に桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)を卒業後ベルギーのブリュッセル、パリに留学。1997年にパリ国立高等音楽院で一等賞(プルミエプリ)を獲得。
ピアノとのデュオ「The DUO」、弦楽三重奏「菖蒲」、ピアノトリオ「東京トリオ」などを結成し、室内楽に力を入れているほか、ソロリサイタル、コンチェルトなど数々のコンサートで演奏。NHKの朝の連続ドラマ小説「てっぱん」、稲本 響が音楽監督を務める映画、「長い散歩」、「イキガミ」、「スープオペラ」、「星守る犬」、の中で流れるチェロも演奏している。
高嶋流エンターテインメント その3 ~フルオーケストラ(80名程度)を9人で
G.ガーシュウイン「ラプソディ・イン・ブルー」は、ニューヨークで忙しく生活をする人々の様子が描かれたオーケストラ編成で演奏される「シンフォニック・ジャズ」の代表曲であり、映画「ファンタジア」の公開60年後に、続編として作られた「ファンタジア/2000」に登場します。
フルオーケストラで演奏するこの曲を9名の演奏者で演奏するための編曲をしたのが、伊賀拓郎(ピアニスト)です。
冒頭の有名なクラリネットの演奏部分を、高嶋ちさ子がヴァイリンで代奏するなど、他の楽器のパートを代演したり、1人で2つ以上の楽器を扱ったりすることで、フルオーケストラに負けない広がりや味わいのある音楽に編曲している力量はさすがです!
ピアノのソロ部分のラテン系アレンジも、ドラマチックで迫力がありました!
伊賀拓郎(ピアニスト)は、今回の「高嶋ちさ子のわがまま音楽会~ディズニーのファンタジア編」の編曲を全部引き受けています。
ピアノ・フルート・トイピアノを演奏に加え、編曲までしている伊賀拓郎(ピアニスト)のマルチぶりに圧倒されました。
伊賀拓郎 Takuro Iga(ピアニスト)
作曲家・編曲家・ピアニスト・キーボーディストでもある。
3歳よりピアノを始める。国立音楽大学付属音楽高校ピアノ科を経て、国立音楽大学作曲専攻入学。在学中より、ライブ、レコーディング等の活動を始める。
2006年度浅草JAZZコンテストソロプレーヤー部門でグランプリを受賞。
クラシック、ジャズを下地として持ちながら、ポップス、ロック、ラテン、民族音楽などあらゆるジャンルを網羅。絶対音感に優れ、人の声をピアノで再現し披露している。
CM音楽等劇伴の作編曲、アーティストへの楽曲提供/レコーディング等幅広く活動している。
作曲家としてTVアニメ『歌舞伎町シャーロック』『私に天使が舞い降りた』などのほか、『ARIAtheAVVENIRE』など劇場アニメの主題歌の作曲や、『艦これ』『ワンピース』などキャラクターソング、声優ユニットの楽曲提供/作編曲も手がける。
高嶋流エンターテインメント その4 ~石丸・武内アナも出演者全員で演奏
E.エルガー「威風堂々」は、管弦楽のための行進曲。イギリス国民に愛されている曲です。
映画「ファンタジア」では、ドナルドダックが、あらゆる動物たちをノアの方舟に乗せて運ぶために奮闘する物語になっています。
最後に離れ離れになってしまったドナルドとデイジーが再会するシーンに胸打たれたファンも多いとか。
ノアの方舟には動物全員が乗り込むので、石丸幹二が大太鼓を、武内絵美アナウンサーもシンバルを担当して、11名での演奏になりました。
誰でも演奏の輪に入れて、観客も演奏の一部となってひとつの音楽を作りあげる、そんな感動がありました。
「題名のない音楽会」の「高嶋ちさ子のわがまま音楽会~ディズニーのファンタジア編」を観て
今回の番組最後の偉人たちが残した言葉は、ウォルト・ディズニーの『「ファンタジア」は永遠です。私の死後も楽しんでもらえるでしょう。 』でした。
クラシック音楽とアニメーションの融合である映画「ファンタジア」。
ディズニーの予言どおり、私たちは、その魅力にはまり楽しんでいます。
ディズニーの音楽への造詣の深さや、音楽の力を活かして人を楽しませる想いは、どんなに時を隔てても変わらず引き継がれていくのだろうな、と私はしみじみ思いました。
プログラム
♪1:「花のワルツ」
作曲: P.I.チャイコフスキー
編曲: 伊賀拓郎
ヴァイオリン: 高嶋ちさ子、今野均、藤堂昌彦、森本安弘
ヴィオラ: 長石篤志、生野正樹
チェロ: 江口心一、西方正輝
ピアノ: 伊賀拓郎♪2:「魔法使いの弟子」
作曲: P.デュカス
編曲: 伊賀拓郎
ヴァイオリン: 高嶋ちさ子、今野均、藤堂昌彦、森本安弘
ヴィオラ: 長石篤志、生野正樹
チェロ: 江口心一
チェロ・トランペット: 西方正輝
ピアノ: 伊賀拓郎♪3:「時の踊り」
作曲: A.ポンキエッリ
編曲: 伊賀拓郎
ヴァイオリン: 高嶋ちさ子、今野均、藤堂昌彦、森本安弘
ヴィオラ: 長石篤志、生野正樹
チェロ: 江口心一、西方正輝
ピアノ・フルート・ドイピアノ: 伊賀拓郎♪4:「ラプソディ・イン・ブルー」
作曲: G.ガーシュウイン
編曲: 伊賀拓郎
ヴァイオリン: 高嶋ちさ子、今野均、藤堂昌彦、森本安弘
ヴィオラ: 長石篤志、生野正樹
チェロ: 江口心一、西方正輝
ピアノ: 伊賀拓郎♪5:「威風堂々」
作曲: E.エルガー
編曲: 伊賀拓郎
ヴァイオリン: 高嶋ちさ子、今野均、藤堂昌彦、森本安弘
ヴィオラ: 長石篤志、生野正樹
チェロ: 江口心一、西方正輝
ピアノ: 伊賀拓郎
大太鼓: 石丸幹二
シンバル: 武内絵美
偉人たちが遺した言葉
「ファンタジア」は永遠です。私の死後も楽しんでもらえるでしょう。
~ウォルト・ディズニー~
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