題名のない音楽会 ハミング曲を池辺晋一郎、信長貴富、上田真樹が作曲、日本の合唱団に捧ぐ!

2020年8月22日放映の「題名のない音楽会」では、コロナ渦で歌を歌うことができない合唱団に、日本を代表する3人の作曲家、池辺晋一郎、信長貴富、上田真樹が、ハミングだけの合唱曲を作曲して披露しました。

今、新型コロナウイルスの飛沫感染防止のため、合唱団は練習ができず、学校の音楽の授業でも合唱は禁止になっています。

しかし、みんなで歌うことのすばらしさや、気持ち良さを知っている人は、どうしたら思うように歌えるのかとあらゆる可能性を試してみたくなるもの。

それなら、ハミングで歌ってみたらという指揮者、山田和樹の発想は、もしかしたら、新しい文化を生むかもしれません!

ハミングとまともに向き合っていくうちに、今まで気づいていなかったことや可能性が!

ハミングがこんなにおもしろいとは、思っていませんでした。

題名のない音楽会 ハミングだけの合唱曲を作曲

合唱をする時、口を開けて飛沫が飛ぶのが問題なのであれば、口を開けなければいいだろう、ハミングで歌ってみれば!と指揮者、山田和樹は考えたそうです。

確かに。飛沫が飛ばなければ、歌うことはできるかもしれない。

よし!とハミングの合唱曲を探すと、曲の一部にハミングが使われていることは多いのです。

例えば、尾崎豊の「I LOVE YOU」や、さだまさしの「北の国から」、森山直太朗の「夏の終わり」などが、サビの印象的な部分にハミングが使われています。

しかし、全部がハミングの曲は、なかったのだそうです。

山田和樹(やまだ かずき)
30歳(2009年)の時に、かつて、小澤征爾も優勝した、ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝。以降、世界中のオーケストラと共演する日本を代表する指揮者
(出典:題名のない音楽会 番組より)

そもそもハミングとは何でしょう?

ハミング:口を閉じ、声を鼻に抜いてメロディーを歌うこと
(出典:大辞林 第四版 三省堂より)

番組では、指揮者、山田和樹からハミングの合唱曲の作曲を依頼された、3人の日本を代表する作曲家、池辺晋一郎、信長貴富、上田真樹が、それぞれに“ハミング”を定義して、作曲した作品と、その意図を紹介しました。

また、歌手であり、自身も作曲家である土屋礼央が、その作品を聴いて、ハミングの可能性について、コメントしていました。

土屋礼央(つちや れお)
1976年生まれ。日本のアカペラグループRAG FAIRのリードボーカル、インディーズバンドのZboned Zubon、ソロプロジェクトのTTREで活動するシンガーソングライター。
名前の礼央はレオナルド・ダ・ヴィンチから父親が命名した。父は日本画家の土屋禮一、母は絵本作家の土屋侑美、祖父は日本画家の土屋輝雄、詩吟を嗜む祖母はタレント新山千春の縁にあたる芸能一家。
2018年、第4回下北沢ワタナベエンタメフェス「志らくに挑戦!はじめての落語 〜座布団に飛び込む 歌手と俳優五人衆!…と、見届け人 志らく〜をきっかけに立川志ら乃に師事し、本格的に落語を始める。
(出典:出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より)

題名のない音楽会 ハミング合唱曲は楽しい気分の鼻歌サウンド

上田真樹が定義したハミングは、「楽しい気分」。

つい口ずさみたくなるような、楽しくあたたかい雰囲気に曲を仕上げたと言います。

ハミングは、口を閉じている分、高音を出しにくいために、自然さを優先すると、高い音は使わないようにしたのだそうです。

作曲した♪「Humming Hug」は、ソロ4人の部分と合唱のパートに分かれているので、ソリストだけでも、合唱曲になるようにしあがっています。

やさしく澄んだハーモニーが、高い空をゆっくり雲が流れるような、草原にやわらかく風が吹き渡るように聴こえ、すがすがしさと広がりに満ち、気持ちを自然と開放するような合唱曲でした。

土屋礼央は、この曲を聴いて、合唱だと声が前に響きますが、ハミングは、身体全体が響いているので、360度でハーモニーが聴こえるように感じるのが、今まで聴いたことがない体験だと評していました。

上田真樹(うえだ まき)
東京藝術大学 大学院博士課程修了
第18回朝日作曲賞(合唱組曲)受賞 またNコン課題曲でつんく作詞「ボジティブ太郎~いつでも始まり」などを作曲。合唱界で、今もっとも人気のある作曲家のひとり。
(出典:題名のない音楽会 番組より)



題名のない音楽会 ハミング合唱曲は情景が見える歌詞のない歌

信長貴富が定義したハミングは、「超むずかしい。使いこなせば超一流」

鼻歌は1人で楽しい時に歌うものだけど、誰かに届ける表現としてハミングを成立させるためには、響かせるという技術が必要と考えたのだそうです。

歌い手としては、ハミングには制約が多いと感じる、と土屋が言うように、この技術をマスターすれば、超一流の歌手になる可能性が高まるのではないかと信長は言います。

また、信長は、ハミングの難しさは、歌詞がないことにもあると考えて、作品に工夫をこらしています。

歌を歌う人は、言葉で歌いたいという欲求を根底に持っているために、歌詞のないハミングは、言葉で訴えられない難しさがあるのではないかというのです。

今回の作品に、“故郷”のメロディを取り入れて、“故郷”で歌われている風景などの情景を想い浮かべながら歌えるような仕掛けをしたそうです。

歌手でもある土屋は、情景を思い浮かべて歌うと、聞き手への届き方が全然違ってくると思うので、音色にも変化があるのかもと興味深いと言っていました。

山田和樹は、信長の曲を作る時の発想力に驚かされると言っていました。

この依頼を受けてどう思ったかの問いに、信長は、このような状況でも、合唱の練習を再開して、みなで集まって歌うことを力づけたいとの想いで頑張ったと語っていました。

あーこの人は、本当に合唱を、そして合唱を愛してやまない人たちを愛しているんだな、と感じました。

歌う人が気持ちよく、思いっきり楽しんで歌えるようにするにはどうしたらよいのかに、この人は作曲のポイントを持ってきているのだと感じました。

♪「ハミングのためのエチュード」は、5部の構成になっていました。

1.信長オリジナル曲(斉唱)

讃美歌のような祈りを思わせる曲想が静かに響きました。

2. 故郷(二部合唱)

メロディを聴いただけで、くっきりと情景が頭に浮かんできて、言葉で歌っているかのような印象を持ちました。不思議な感覚です。

3.信長オリジナル曲(4部合唱)

最初の斉唱よりも重厚な響きに包まれる感じがします

4.信長オリジナル曲(4部画商)+故郷(二部合唱)

2つの曲が重なり合い、”故郷“をききながら、新しい広がりのある曲を感じました。

5.信長オリジナル曲(斉唱)

最後は元にもどり、静かな夢の世界が終わるような感覚でした。

故郷のメロディを聴くと、讃美歌の祈りのような曲調に、光がサーッと射して、色味のある情景がくっきりと浮かびあがるように感じました。

不思議な開放感でした。

土屋も、歌詞がないようには思えないくらいに情景が思い浮かんだと評していました。

信長貴富(のぶなが たかとみ)
全日本合唱連盟と朝日新聞社が主催する朝日作曲賞を3度受賞(94年、95年、99年)
日本音楽コンクール作曲部門第二位。
1997年に作曲家として独立。作曲は独学、ピアノ他音楽の専門教育を受けた経験もない異色の経歴で、書く曲すべてが人気曲となる稀有な作曲家。
親しやすい曲調で、全国のアマチュアコーラスから絶大な人気を得ている、今大注目の作曲家。
(出典:題名のない音楽会 番組、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より)



題名のない音楽会 ハミング合唱曲は情景が見える歌詞のない歌

池辺晋一郎が定義したハミングは、「声の楽器」。
クラシック音楽や映画音楽の作曲も手掛ける池辺にとって、歌詞のない音楽に違和感はなく、ハミングは、歌詞がない分、ピアノやオーケストラなどのように楽器の役割も果たすと考えたのだそうです。

土屋も「アカペラでヴァイオリンを表現する時に、ハミングを使っていました。弦楽器とハミングは整合性があるかもしれない」と語っていました。

池辺は、弦楽器だと弓でアクセントをつけたりしますので、ハミングでもこれができるのではないかと想い、伸ばすだけではなく、起伏をつくることをやってみようと、起伏あるアクセントを曲の中に散りばめたと、作品について語っていました。

池辺の作曲した♪「ハミングの消息―混声合唱のために」は、ハミングがまるで楽器のように、いろいろな音が重なり合い、強弱を感じる曲だと思いました。

土屋は、ハミングが何かの楽器の代用になるのかと思っていたら、ハミングならではのパートやフレーズが出てきて、オーケストラのパートになっていたことが面白いと思いました。

ハミングというパートが加わったら、新しいクラシック音楽ができるのではないか?と魅力的なことも言っていました。

新しい音楽の形態ができてくるかもしれませんね。楽しみです!

山田和樹が、池辺晋一郎に作曲を依頼した理由をこんな風に言っていました。

「先生は、周りの方を笑顔にされる方だから、ハミングの曲を依頼する作曲家は誰か、と思った時にフッと思いついたんです」

池辺曰く、「ハミングの曲のオファーを受けた時に、おもしろいことを考える人がいるんだな、と思って、まずはフムフムと聞いたわけですよ。Hummingは、Humで始まるから」
(ここでスタジオが湧く!)

「私にとって、歌詞がないことには、結構僕は慣れているから。しがない(詞がない)作曲家だから。」
(ここでもスタジオが、“2つ目”と湧く)

番組の中で、池辺節が、出演者に笑いを引き起こしていました。

新しい音楽が、こんな温かなやり取りの中から生まれてくるなんて、ステキですね!

池辺 晋一郎(いけべ しんいちろう)
1943年生まれで、日本を代表する作曲家。
東京芸術大学を卒業し、一般社団法人全日本合唱連盟顧問、東京音楽大学名誉教授。
2004年に紫綬褒章が授与され、2018年に文化功労者に選出。
東京芸術大学在学中に書いた室内楽曲「クレパ七章」で注目され、10曲の交響曲をはじめとする演奏会用作品を作曲。黒澤明や今村昌平の監督作品をはじめとする映画音楽や、NHK大河ドラマ「独眼竜正宗」や、『未来少年コナン』などのテレビ番組の音楽も多く手がけている。
また、全日本合唱連盟の役員を長年務めるなど、合唱にも深く関わっている。
(出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より)



題名のない音楽会 前代未聞ハミングだけの飛沫をとばさない合唱団を観て

ハミングだけで合唱を!の発想にも驚きましたが、オファーを受けた3名の作曲家が同じハミングを扱っているにも拘わらず、全く違うアプローチからそれぞれが魅力的な作品を作曲していることに、感動しました。

こんなにバリエーションがあるなんて、人ってすばらしい!!
可能性は無限にあるんですね。

他の人も作曲したら、また違った作品がたくさんできてくるってことですよね。

今、ハミングに興味をすごく持っている人はそんなにいないかもしれませんが、ハミングが主流になった時、一体いつ誰が始めた?となると、今、この時にスポットライトが当たるのかもしれません。

 

 

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