題名のない音楽会 鈴木優人、原田慶太楼、川瀬賢太郎が語る指揮者の仕事の大変さとは?

2020年8月29日に放映の題名のない音楽会のテーマは、「意外と大変!指揮者の仕事を知る休日」
指揮者の仕事は何?
その仕事の大変さは何?

オーケストラでただ一人、音を出さない音楽家である「指揮者」。
でも、オーケストラや、合唱コンクールでも必ず存在しているのに、意外に知らないかも。

番組内で紹介された「指揮者のイメージは?」のアンケートの回答には、こんなコメントが寄せられていました。

50代女性・・・オーケストラで一番偉い人
20代男性・・・なぜ必要なのかわからない
60代女性・・・楽器演奏の挫折から逆切れして演奏者を牛耳る側に寝返った人

指揮者がよく知られていない実態が明らかに。

オーケストラでただ一人、音を出さない音楽家、指揮者の知られざる役割とその苦労に番組はせまりました。

ちなみに、指揮者の仕事を調べてみると、

指揮者は演奏者のように楽器の練習をするのではなく、曲の分析とリハーサルでの指示出し、また本番の公演で指揮をとることが主な仕事です。

楽譜を読みこんだり、他のオーケストラが演奏する曲を何度も聞いたりして、曲のイメージを膨らませます。

世界的に活躍する一流のオーケストラでも、それぞれの楽器のパートを完全に把握している演奏者はほとんどいません。

指揮者はすべてのパートの音程、音の強弱、音のニュアンスの出し方などを把握し、自分の求める演奏に近づけるように指示を出していきます。

演奏者たちをまとめる

指揮者の役割は、さまざまな個性や楽器を持つ演奏者や音楽家たちの演奏をまとめ上げ、ひとつの作品として完成させることです。

(出典:キャリアガーデン 「なりたい」が見つかる職業情報サイトより)

まとめると、全てのパートの音程から音のニュアンスまで把握し、幅広い知識を得て、曲想のイメージをふくらませ、それをオーケストラに伝えてまとめていくリーダーシップを発揮する、というところでしょうか。

守備範囲が広い上に、さまざまな能力も必要だと思われます。

番組では、国内外で活躍する指揮者、鈴木優人、原田慶太楼、川瀬賢太郎の3名の若手指揮者が、それぞれに指揮者の仕事や苦労や想いを熱く語ってくれました。

指揮者は音楽家以上のビジネスマン的要素も求められることに驚き、尊敬とともに、もっと指揮者一人一人を知りたいと思いました!



題名のない音楽会 鈴木優人、原田慶太楼、川瀬賢太郎、若手指揮者の経歴

国内外で活躍する鈴木優人、原田慶太楼、川瀬賢太郎の3名の指揮者は、クラシック音楽界では、若手の指揮者と言われるのだとか。

えーっ、若手?3名とも35歳以上だし。

でも、クラシック音楽界では、デビュー後間もないくらいの年齢なのだとか。
50代でも若手といわれる世界。

まるで政治家みたいですね。

名マエストロだと90歳でも指揮棒を振る人もいるため、30代なんて赤ちゃん、生まれる前みたいな感じなのだと3名の指揮者たちは言っていました。

奥深い仕事なんですね。
まだ若手といわれるのだから、ご苦労されることも多いのではないでしょうか?

それぞれの指揮者の年齢、経歴は以下のとおりです。

鈴木 優人(すずき まさと・39歳)
指揮者、作曲家、ピアニスト、チェンバリスト、オルガニスト、演出家、プロデューサーとして、幅広い音楽分野で活動する。世界的なオルガン奏者、鈴木雅明を父に持つ。現在、オランダ在住。
バッハ・コレギウム・ジャパン首席指揮者および読売日本交響楽団指揮者。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

原田慶太楼(はらだけいたろう・35歳)
アメリカのサヴェンナ・フィルハーモニック音楽&芸術監督
2021年4月より東京交響楽団正指揮者に就任決定
指揮法をロシアのサンクトペテルブルグで学び、2006年21歳の異例の若さでモスクワ交響楽団を指揮してデビュー。2010年タングルウッド音楽祭で小澤征爾フェロー賞、2013年ブルーノ・ワルター指揮者プレビュー賞、2014・2015・2016年米国ショルティ財団キャリア支援賞を連続受賞。
スター・ウォーズの作曲者のジョン・ウィリアムズからの信頼が厚く、アメリカのオーケストラで音楽芸術監督を務める
(出典:原田慶太楼オフィシャルサイト)

川瀬賢太郎(かわせけんたろう・35歳)
大学在籍中に、東京国際音楽コンクールで最高位に入賞。神奈川フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者、名古屋フィルハーモニー交響楽団正指揮者およびアンサンブル金沢常任客演指揮者を兼務
(出典:川瀬 賢太郎 (@kawaken1229) Twitter)

題名のない音楽会 鈴木優人指揮者が語る役割と指揮のポイント

オーケストラの中で、楽器ももたず、一人だけ観客に背を向けている指揮者がどんな役割を持って、実際に何をしているのかについて、鈴木優人(すずきまさと)指揮者が語ってくれました。

役割⓵
たくさんの演奏家(楽器)で演奏するために、曲のテンポを決める役割があります。
昔は、杖で床をたたいてテンポを知らせていたそうですが、これでは音が出て、音楽が台無しになってしまうので、身振り手振りを行うようになったと言います。

役割⓶
複数の音楽家が集まって演奏すると、それぞれの音楽の解釈が楽譜に対して生まれるため、解釈の方向性を身振り手振りや、呼吸でひとつにまとめる役割があります。

鈴木優人が指揮する時に、オーケストラとのコミュニケーションで大切にしているポイントについて、G.Fヘンデル作曲『メサイヤ』より「ハレルヤ」を指揮している映像で説明をしてくれました。
この曲は、歌い手がいるので、歌い手とのアイコンタクトが大事なポイントだと言っています。

【鈴木流指揮のポイント】
⓵目の合図で高温を引き出す:
部分ごとの重要パートにその都度アイコンタクト

⓶目をつぶって音をそろえる:
どのパートも際立てず調和させる時に目をつぶって指揮をする

③目を逸らして演奏の邪魔をしない:
曲中にナチュラルトランペットのメロディーが入る時、普通のトランペットよりも演奏が非常に難しく技術の必要な楽器のため、演奏者をあえて見ないことで余計な指示を出して、演奏者を惑わせないようにしている。曲想や演奏についての方向性は、リハーサル時に行い、信頼関係を築いて、本番は演奏者にまかせる方法を取る場合もある。

鈴木は、指揮棒を持たないことが多く、それは、両手で音の表情を伝えられるメリットがあるからと語っていました。

また、指揮者は、オーケストラを束ねる役割でありながら、オーケストラに雇われて指揮をすることが多い為、最初は部外者としてオーケストラと対峙するところから始まるのだそうです。

そうなると、オーケストラとの信頼関係を築くことが、演奏をする上で重要になりますね。

鈴木流極意が番組で語られました。

【鈴木優人流オーケストラとのコミュニケーションの仕方】
オーケストラのメンバーも人間なので、体調が悪いなどで機嫌が悪く見えることもある。1人1人の顔色を見るのではなく、音楽を見て、すばらしい音楽を一緒に作りあげようと取り組むことに集中しています。


題名のない音楽会 川瀬賢太郎指揮者が語る指揮のポイント

川瀬賢太郎が指揮する時に、オーケストラとのコミュニケーションで大切にしているポイントについて、A.ドヴォルザーク作曲の「交響曲第9番『新世界より』」第4楽章 を指揮している映像で説明をしてくれました。
川瀬賢太郎がこの曲を選曲したのは、大学卒業の課題曲で、一般的にもポピュラーで人気のある曲なので、今までの最も指揮した経験が多いために、指揮にも想いがあるからのようです。

指揮時には、演奏者が音を出す何秒か前に、オーケストラに指示を出すことが大事で、手から顔(表情)まで全身を使ってオーケストラに伝えるようにすることに注意しているそうです。

【川瀬賢太郎流指揮のポイント】
⓵体をかがめて音量を指示:
音量を落とす前にかがむ

⓶左手で音の長さを指示:
独特なハーモニーがくる時は、音の粘りを表現したいために左手でその表現の指示を出す

③顔の表情で音色を指示:
クラリネットのソロ部分で音色を変える時、あまり指揮からの指示を強力にせずに、顔の表情を穏やかにして曲の雰囲気をみなで感じられるようにする

また、川瀬賢太郎は、指揮者は自分一人では何の音を出すこともない上に、リハーサル時にオーケストラの演奏を止めて、唯一言葉で要求できる立場にあるため、オーケストラとフェアな関係を作る為には、音楽を言葉で伝えるのではなく、手振り身振りや表情で伝えるのが大事だと、心掛けているそうです。

【川瀬賢太郎流オーケストラとのコミュニケーションの仕方】
また、オーケストラの空気を読んだ上で、達成したい音楽には、もう少し頑張ってもらいたいなどある時は、あえて空気が読めないふりをして、オーケストラにこうしましょうと鼓舞していくこともあるとか。
普段から気を使っていることを分かってくれているメンバーは、あなたがこういうのなら、頑張りましょうと足並みをそろえてくれるそうです。

題名のない音楽会 原田慶太楼指揮者が語る指揮のポイントと海外の指揮者の役割

原田慶太楼が指揮する時に、オーケストラとのコミュニケーションで大切にしているポイントについて、 P.I.チャイコフスキー作曲の「交響曲第5番」第4楽章 を指揮している映像で説明をしてくれました。

【原田慶太楼流指揮のポイント】
⓵右手と左手の使い分け:
右手はファンファーレをしながら、左手は弦楽器のやわらかいところを流す感じで使う。右左は常に違うことをすることに集中

⓶神業:
金管楽器の音で弦楽器のメロディーが消えないように、左手でさりげなく金管楽器に音量のストップをかける

この曲は、金管楽器の演奏者もバランスが大事だと知っているので、指揮者からの指示が0.5秒でパっと飛んできたら、考えて吹くことを意識するのだそうです。

指示の出し方にも注意が必要だとか。

原田指揮者の0.5秒の指示だしは、神業的なスマートさで、その後の音楽が素晴らしく調和されたのですが、川瀬指揮者によると、指揮者の指示の出し方が、オーケストラが不快に感じるような出し方だったりすると、上手く音楽がまとまらなくなることもあると言います。

いやー音楽を作っていくって、人間と人間の葛藤も入ってきて、難しいものなんですね。

【原田慶太楼流オーケストラとのコミュニケーションの仕方】
オーケストラの中で、自分を嫌っていそうな人に敢えてアプローチをしていくのだそうです。嫌われている理由があるはず。そこを具体的に言ってくれると、大きな気づきになり、とてもありがたいのだそうです。

海外で、音楽芸術監督(注)を務める原田指揮者は、アメリカで一番指揮者として大事なこととは、音楽を作ることよりも自分のオーケストラのために、お金をどれだけ引っ張ってくる力量があるかということらしいのです。パトロンにお金を要求するコミュニケーションに長けた人である必要があるのだとか。
(注)音楽芸術監督:楽団で音楽に関する部分の最高責任者、指揮者が兼ねることが多い(楽団によって異なる)

いやーすごい。こんなこともしているなんて。

超人的ですよね。音楽に限らず、ビジネスに関わる知識も必要になるし、魅力的な人間性を持っている必要もあるということですよね?

そのため、原田指揮者は苦労も多いとか。

アメリカにいると、朝食、昼食、夕食を2回ずつになってしまうのだとか。

何故かというと、パトロンの方々と食事をして、コミュニケーションを常に取るようにしているのだとか。

「身体がアメリカンサイズになりますよね」と、ご本人は笑いを取っていましたが、命がけのビジネスですよね。

鈴木指揮者も、「大事なマインドですね。オーケストラ100名の人生を担っているわけですから」と言っていました。

また、パトロンの方の遺言に自分の財産の何パーセントをオーケストラに寄付してくれるかを書いてもらうかの話もするのだそうです。

海外では、指揮者は、音楽をつくること30%、ビジネスマンのメンタリティ70%が必要だとのことでした。

企業の社長よりも、プレーヤーとしての仕事もあるなど業務も広範だし、1人で全部をこなすわけだから、スペシャルビジネスマンってことになりますよね!

題名のない音楽会 鈴木優人、原田慶太楼、川瀬賢太郎、若手指揮者が語る指揮者の苦労

3人の指揮者が共通して苦労していることが、こんなにたくさんあるなんて。
みなさん、指揮者になるとどうして決めたのでしょうか?

⓵全楽器のパートの楽譜を読み込まないといけない
オーケストラ(演奏者)は、自分の楽器の音を記したパート譜だけを見て演奏しますが、指揮者は、オーケストラを束ねるのが仕事なので、全ての楽器パートが表示されている楽譜を見て指揮をします。曲によっては50-60段の大きなスコアのものもあるそうです。

次にとの楽器が、どんな風に演奏するのか音をイメージしていくのだと思いますが、ごちゃごちゃになってしまいそうですね。

⓶楽譜をたくさん持ち歩かないといけない
原田指揮者が、いつも持ち歩いているというキャリーバックの中身を見せてくれました。本しか入っていない!厚いもの、大きいものから小さいものまで、実際は本ではなく楽譜なのですが、商売ができそうなくらいに沢山の楽譜が、おそろしく重そうにギッチリと入っていました。

③指揮者は社長ですか?といわれますが、実際は中間管理職?
実は社長は作曲家なのだとか。既に、作曲家が完璧な指示書を作って残してくれているので、指揮者は、作曲家の期待を裏切らないように、演奏者の音楽をひきだす役割をになっているのだそうです。社長の指令書=作曲家の楽譜

④全ての楽器を理解して、演奏者の気持ちや楽器ごとの特性を理解する必要がある
全ての楽器の演奏者が、どんなメンタリティで、どのように身体を使って、どうブレスをとって美しい音を出しているのかが分からないと、演奏者の気持ちが分からなくて、音楽を共有できないと言います。
そこで、指揮者は、楽器の演奏テクニックを身につけているのだそうです。

例えば、鈴木指揮者は、鍵盤楽器(チェンバロ、ピアノ、オルガン)の演奏者でもあります。中高生の時は趣味でフルート、ファゴットを吹いていたそうです)

また、原田指揮者は主にサックスの演奏者で、他にフルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ヴィオラの演奏テクニックを学んだそうです。

指揮者って本当にマルチの才能が必要ですよね。

⑤とにかく孤独
常に一人で多人数のオーケストラと対峙しています。

⑥オーケストラを束ねる役割ではあるけれど、絶対的なリーダーではない。
指揮者はオーケストラに呼ばれて指揮する雇われるポジション。指揮者は部外者としてオーケストラと対峙する立場でスタートするために、オーケストラとのコミュニケーションが非常に大事になるそうです。

⑦オーケストラと初めましてから始めないといけない。常にオーケストラから試されている
どんな指揮者なのかをオーケストラから常にジャッジされています。

ファーストインプレッションはすごく大事で、楽屋から指揮台に歩いていく雰囲気から、最初のリハーサルを実施して3分くらいで、オーケストラはこの指揮者と仕事をするかどうかを決めることがほとんどなのだとか。

なんて恐ろしい。。。

オーケストラに受け入れてもらえない時も、もちろんあるのだとか。如実に分かるのは、オーケストラが指揮者を完全に無視して演奏している時なのだとか。

特に指揮者がデビューしたての若い頃は絶対に苦労をするものだそうです。

早くリハーサルを終わらせないと、楽団員がこわいと必要以上に気を遣いすぎて、気が付いたら、円形脱毛症になっていたりすることもあるのだそうです。

本当に厳しい仕事です、指揮者って。

題名のない音楽会 「意外と大変!指揮者の仕事を知る休日」を観て

指揮者の仕事がこんなに広範で、音楽性を追求するのみかと思いきや、オーケストラとの人間関係にも気を遣い、はたまた経済にも目を配り、パトロンとのコミュニケーションにも長ける必要があるなんて、本当にすごいな!と思いました。

指揮者の役割や大変さを今回は番組で扱っていましたが、是非次は、指揮者を目指した理由、そしてその仕事の喜び、やりがいをお聞きしたいと思いました。

きっと、大変さを超えた喜びが大きいからやっている仕事なのでしょうから。

指揮者の活動にも注目して今後見ていこうかな、と思いました。

 

 


コメント

タイトルとURLをコピーしました