情熱大陸 忽那賢志(感染症医)の『回復者血漿療法』で新型コロナウイルスに立ち向かえ!

2020年10月11日の「情熱大陸」は、感染症医の忽那賢志(くつな・さとし)。

新型コロナウィルス感染症が、日本で拡大してから、およそ半年がたちます。

現在まで、国内の感染者は、8万人以上、死者1,500人以上に達します。

忽那が勤める、国立国際医療研究センターは、国の感染症対策の中核を担っており、中国・武漢からのチャーター便の帰国者対応や、クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」号の患者受け入れなど、発生直後から、コロナ対策の最前線のリーダーとして、新型コロナ感染者への治療に、あたってきました。

今も、予断を許さない状態ですが、今冬にも来ると思われる第三波を、忽那たち医療従事者は、危惧しています。

いまだ確かな治療法がなく、ワクチンもない中で、忽那が、第一波の最中より、研究を始めていたのが、コロナ感染から回復した患者から、新型コロナウイルスに効く抗体を取り出す『回復者血漿(かいふくしゃけっしょう』。

日本初の試みとして期待を集め、9月に、倫理委員会の審査が終了し、ようやく臨床研究が、始められるようになりました。

番組では、「100年に一度の感染症災害」に立ち向かう、忽那たちの模索の半年間を、感染症医の最前線の現場に迫ります。

情熱大陸 忽那賢志(感染症医)はどんな人?

忽那賢志(くつな・さとし)は、福岡県北九州市出身で、1978年12月7日生まれです。

山口大学医学部を卒業後、救急医療などの現場で経験を積み、その後、感染症を専門とするようになります。

2012年より、国立国際医療研究センター国際感染症センターに勤務。

デング熱、エボラ出血熱擬似症のほか、忽那が診断した珍しい症例として、回帰熱や、2013年に国内初となるデング熱に似た熱帯感染症・ジカ熱があります。

今年は、20本以上の論文を発表し、9月には世界的に最も権威ある医学雑誌、「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に、新型コロナウィルス感染症の、抗体化の推移に関する論文が掲載されました。

落ち着いたら、ウィルスを持つマダニを探しにフィールドに、再び行きたいと願っています。

趣味は、お寺巡りで、同僚や友人からは「仏の忽那」の愛称で、親しまれています。


情熱大陸 忽那賢志(感染症医)の新型コロナウィルス感染症との闘い

感染症専門医、忽那賢志の拠点である、東京・新宿にある国立国際医療研究センターは、2020年1月の中国武漢から、緊急帰国した日本人のPCR検査に始まり. クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」号で、感染した重傷者を受け入れました。

未知のウィルスに直面した忽那は、こんなことを言っています。
「高齢の方が感染して、重症化していくところを、その時初めて見ました。朝、酸素吸入器を吸っていなかった人が、その日の夕方には、人工呼吸器をつける状態になる。本当に時間単位で、悪くなっていくんです」

これは、どういう感染症なのか、なんでこんなに急に悪くなるのか、このウィルスの持つ攻撃力と、感染力の強さに、絶句したといいます。

一時期、病院には、新型コロナを疑う人々が、殺到する事態が発生し、医療崩壊の恐れを切実に感じた時期もありました。

夏が過ぎて、ひと頃のような緊張が、薄れ薄れつつあるように思いますが、医療の最前線に立つ忽那は、こう言っています。
「みんな、第二波が終わって、次に備えよう、みたいになっているのかもしれないですね。でもまだ医療現場は、第二波の対応をしていますから。まだ終わっていないですよ」

東京・新宿の国立国際医療研究センターに勤める、忽那の所属する部署は、日本における感染症対策の中核をなしており、医師看護師など合わせて、33人が従事しています。

9月初旬時点で、新型コロナ専用の入院病棟では、軽症者から重傷者まで、およそ20人が治療を受けていました。

医療チームは24時間体制で、容体の変化に対応しています。

自身の目で、患者一人ひとりの様子を見るのも、忽那の務めです。

ここには、重症化のリスクが高いため、他の病院から転院してきた男性がいました、
酸素投与が続いていますが、自覚症状は、あまりないと言います。

忽那が声をかけます。
「息苦しさとかは、変わらないですか?」

患者の男性は、
「夜だけ咳き込む」と答えます。

どんどん悪くなっている感じではありませんが、治療は依然として手探りの状態です。

抗ウィルス薬のレムデシビルと、ステロイドのデキサメタゾンの併用が、効果をあげていました。

忽那たちにとって、こうした処方に至るまでも、大変なの道のりでした。

ICUで、長く治療を続けている新型コロナの患者に、急に異変が発生しました。
「肺は悪くなってないんですけど、熱が今日から出て、何が原因なのかなぁ」

気管切開するまでに重症化した患者は、危機を脱し、緩やかに回復しつていたにもかかわらず、突然発熱しました。

ICU患者の痰のグラム染色を調べると、痰にバイ菌はなく、肺炎を起こしていましたが、治療自体はうまくいっていると判断できました。

夜になり、患者の熱は下がっていました。

治療に問題ないと分かっても、臨床医は、原因をつき止めずにはいられません。

新型コロナウィルスに対する、確実な治療法は、まだ見つかっていません。
だからこそ、重症化を防ぐ道が模索されています。

現状では、対症療法に追われるのが精一杯といいます。

忽那が、抗体を含む回復血漿療法を試したいと思ったのは、コロナ陽性の初期段階で、ウィルスの増殖を抑えられれば、重症化を防げると考えたからです。

忽那は、これほど厄介な感染症に出会った事は無い、とため息をつきます。
「(新型コロナウィルスは)広がりやすさと、致死率と重症化のバランスが、ちょうど嫌なところを突いてくるウィルスだと思います。インフルエンザだと、致死率が0.1%とか0.01%ですけど、新型コロナは、致死率が数%もあって、これは、社会として許容できない(頻度)ですよね。そのウィルスに、世界中で何千万人が感染している状況ですから。本当に災害ですよね。これが夢ならよかったのに、と半年以上経った今でも、時々思います」

情熱大陸 忽那賢志(感染症医)が新型コロナウィルス感染症の治療法として願いを込める『回復者血漿療法』とは?

感染症を専門とする忽那賢志は、新型コロナウィルスに感染した時、いかにして重症化を防ぐかという、新たな研究に取り組んでいます。

忽那がその可能性を見出しているのが、『回復者血漿療法(かいふくしゃけっしょうりょうほう』です。

『回復者血漿療法』とは、コロナから回復して間もない人の血液に、ウィルスの増殖を阻む抗体ができることを利用して、その抗体を、感染初期の患者に投与し、重症化を防ぐ療法です。

忽那は、2020年4月には、「回復者血漿投与」が、新型コロナに効くのではないか、と発表していました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新たな治療法に取りかかるNCGM
COVID-19回復者の血漿投与、臨床試験を開始

国立国際医療研究センターは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症し、その後回復した人の血漿をCOVID-19の患者に投与する「回復者血漿投与」を4月中にも開始する。

COVID-19から回復した人の血漿をCOVID-19患者に投与することで、血漿中の抗体がCOVID-19患者の治療に寄与すると考えられており、国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那賢志氏は、「中国で5例報告が出ており、全例が劇的に回復しています。まだ5例だが、理論的には効くはずだ」と話す。
(出典:日経メディカル オンラインサイト 2020/04/05)

 

血漿投与の臨床研究は、つい最近、認められました。
臨床研究が、成果を上げれば、コロナの脅威にも、歯止めがかかります。

しかし、抗体の量には個人差があり、誰もが血液を、提供できるわけではありません。
十分な抗体を持つ血液を選んで、血漿と呼ばれる成分だけを、集める必要があります。

そのために、忽那は、協力者を募り、血漿を集めています。

血液提供の協力者のひとりは、こんなことを言っていました。
「食べたものが血でわかるって、めっちゃ恥ずかしいですね」

この方は、採血の前に、“とんこつラーメン”を食べていたようです。
血ひとつで、さまざまな情報がわかり、そして誰かを助けることができる可能性があることに、驚きます。

忽那が、薄オレンジ色の『回復者血漿』を大事に持って
「これが抗体を多く含む『回復者血漿』、プレミアム血漿ですね。お宝です」と、嬉しそうに言います。

協力者の中に、意外な人物がいました。
8月に新型コロナに感染し、既に回復した、お笑いタレントの庄司智春(しょうじ・ともはる)です。

庄司は、一時は、酸素投与も必要な状態であったことから、十分に抗体があると思われ、また、かつて、海外ロケで体調崩した際に、忽那の治療を受けたご縁もあって、協力を依頼されたのだと言います。

庄司は、協力をしようと思った理由を、こう語っていました。
「忽那先生からお電話をいただいて、このような研究されていると説明を受け、正直一瞬怪しいな、と思ったのですが、僕自身(新型コロナにかかっている時)ほんとに辛かったので、みんなには、なってもらいたくないなぁ、と思ったのと、僕の血液が、少しでも、研究の成果に貢献できたらいいな、と思って」

決定的なコロナの治療法が、まだ見いだせていない中、『回復者血漿療法』は切り札となるのか、その希望を持って、日本初の臨床研究が、始まりました。

忽那は言います。
「有効性とか、安全性は、まだ十分に確認されてはいない治療ですけど、もしこれが示されれば、大事な新型コロナ治療の選択肢になり得る、と思いますので。やられっぱなしじゃだめですからね」

血漿の提供に協力したある男性は、人工肺・ECMO(エクモ)の助けを借りて回復し、検査の結果、十分な抗体を持っていました。

一般的には.重症な方ほど、抗体が高くなる傾向にあるのだそうです。

採取する血漿は、体重によりますが、一般的の献血と同様に、およそ400 CC。

採血の仕方は、横になり、右腕から取り出した血液を血漿分離器に通し、赤血球、白血球、血小板などを分離して、黄色味を帯びた血漿を取り出し、血漿以外の血液は、左腕から再び体内に戻します。

男性の体調に気を使いながら、作業は1時間程度で終わりました。

男性が『回復者血漿療法』の臨床研究に協力したのも、過酷なコロナ体験があったからだと言います。
「人工肺・ECMO(エクモ)に繋がれている時に、家内が、2回ぐらい見に来たらしいんですけど、様々な物に繋がれている私を見た時には、今のように、立って歩いて、しゃべれるようになるなんて思えず、奇跡だと言っていました。この血漿を使って、治療薬ができれば、さらに良いかなと思っています。早くコロナが集結してほしい。その一言に尽きます」

新たな臨床研究が出来るのも、協力者のおかげだといいます。

血漿をストックする一方で、忽那は、都内の病院に、研究への参加を呼びかけていました。

研究成果のデータは、多ければ多いほど、有効性や安全性の裏付けができます。

既に、厚生労働科学研究費を取得しており、他の病院の費用負担軽減のために、必要な経費についての準備もできる状態になっていました。

国内初の『回復者血漿投与』の患者が決まったのは、10月2日でした。

投与するには、2つの条件をクリアする必要があります。

⓵入院3日目以内で、中等症であること
⓶本人が同意をしていること

発症から1週間の患者は、症状悪化が危ぶまれる時期です。

大切に保管されてきた血漿が、用意されます。

医師も看護師も、緊張した面持ちです。

『回復者血漿療法』の効果は、どう判断するのでしょうか?
通常、発症から10日ほどで、人工呼吸器をつける人がいるので、その状態にならないのが判断の基準になります。

血漿の投与量は、200 CC。
最初は、アレルギー反応が起きることが稀にあるので、ゆっくりと投与します。

忽那の眼差しは、血漿が送り込まれる点滴にじっと、注がれていました。

『回復者血漿投与』を終えて、3時間が過ぎました。

忽那は、言います。
「懸念された副作用もなく、大丈夫そうです。効果はこれからになりますが、まずは順調に始まりました」

血漿投与から9日経った時点で、患者は回復に向かっていると言います。


情熱大陸 忽那賢志(感染症医)の前に進む原動力は、周りの温かい理解と励まし!

忽那が出勤して、ユニフォームに着替えると、その背中にコロナファイターズと描かれた、かわいらしい(でも、目は勇ましい)キャラクターが。

忽那は、背中のキャラクターについて、こう答えていました。
「これはですね。漫画家の羽海野チカ先生が、医療従事者向けに、コロナに向けてがんばってほしいと絵を書いてくださって。コロナ渦で起きた唯一のいいことです」

また、家族との時間を大事にする忽那は、少しでも早く仕事終わらせるために、ほとんど昼食を取らないそうです。

玄関の扉を開けると、妻と3人の子どもが勢ぞろいで、口々に「お帰り」と迎えます。
これが日常の風景。

妻が言います。
「いつも穏やかな夫ですけど、コロナ上陸の直後は、悲壮感がありました。あの頃は、帰る時間が早くても、すごくきつかったんだろうな、と感じる時がありましたね。私がいろいろ話をすると、『疲れているから』と、ちょっときつめに返事が返ってきたりして。ちょっとギスギスしていたかも」

番組スタッフが、忽那の仕事が、家族に影響与えなかったかを質問すると、
家族全員があっさりと、「うちは、何もなかったんです。誰からも何も」と答えていました。

そして、むしろ、応援の声を貰ったと言っていました。
「お父さん大変ねー、テレビで見てるよー、と言ってくれて」
息子も「お父さんすごいね」って言われたと言います。

こんなすてきな家族と、周囲の人がいるから、忽那が安心して頑張れるのかもしれません。

国内初の『回復者血漿投与』の記念すべきはじめの一方踏み出した、忽那が、院内の敷地の一角に番組スタッフを案内してくれました。

病院の隣に建つ、団地の壁に掲げられた、垂れ幕を見せてくれたのです。
その垂れ幕には、こう書かれていました。

『感謝! 最前線で働くすべての方々へ
#エールを送ろう#ありがとう』

 

激励の言葉を見るたびに、忽那は、思わず背筋が伸びるそうです。

出口のないコロナとの戦い、疲弊する現場の中で、気持ちが救われるのは、漫画家の羽海野チカさんや、たくさんの方々から、応援メッセージをもらったことだと、忽那は言います。

「人間対コロナで言うと、最初はコロナに負けていたのが、だんだんと押し返しているなぁっていうのは思います。やはり、医療者も、研究者も、人類が一丸となって戦っているからだと思うんです。希望は、だんだん見えてきているかなぁ、と思います。医療者も研究者も頑張っていますから」

忽那の言葉と、闘う姿に、希望と感謝が溢れました。


情熱大陸 忽那賢志(感染症医)を観て

先の見えない中、ひたすらに人の命を守るために、目の前のことに立ち向かう人がいる、このことに本当に感謝です。

最前線で頑張ってくださっている方々の現場を知って、感謝を伝え続けることが、できることではないか、と思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました