題名のない音楽会 昭和のポップスの魅力!“ニッポンの秋“の歌をクラシック音楽(協奏曲)にアレンジしたら?

2020年10月10日の「題名のない音楽会」は、「昭和ポップス!“ニッポンの秋”協奏曲の音楽会」。

昭和のポップスがオーケストラで演奏されるの?

昭和のポップスといえば、アイドル全盛期で、「誰が新曲をだしたよね!」、「この歌詞がいい」、「このメロディーがたまんない」、どのグループのファンであるかが自己紹介のフレーズになるなど、皆の共通の話題として定着していたし、その歌詞やメロディーを聞くと、自然とその当時の時代背景や、自身の思い出が甦ってくる、不思議な魅力がありますよね。

今、若い世代や、海外でも昭和ポップスは大人気なのだとか。

どこに魅力があるのでしょうか?

長く演奏され、聴かれ続けてきたクラシック音楽に、何か共通するところがあるのでしょうか?

番組では、昭和ポップスの中から、今の時期に合わせて、「秋」のイメージにぴったりな名曲を、歴代の大作曲家たちが協奏曲にアレンジしたらどうなるか?というチャレンジがされます。

山口百恵の「秋桜」をロシア出身の作曲家、ラフマニノフが、松田聖子の「風立ちぬ」をフランスの作曲家、ドビュッシーが、小泉今日子の「木枯しに抱かれて」をモーツァルトが、もしも作曲したのなら、一体どんな音楽になるのでしょうか?

おもしろいですね!

昭和ポップスでは、歌詞を聞かせていたから、テンポもある程度ゆっくりだし、オーケストラで演奏するのもありかもしれません。

題名のない音楽会 昭和のポップスの山口百恵の「秋桜」、松田聖子の「風立ちぬ」、小泉今日子の「木枯しに抱かれて」とはどんな曲?

山口百恵の「秋桜」(コスモス)は、1977年10月1日にリリースされ、「日本の歌百選」に選ばれています。作詞・作曲は、さだまさしです。

松田聖子の「風立ちぬ」は、1981年10月にリリースされ、松田聖子の7枚目のシングルになります。

第23回日本レコード大賞・ゴールデンアイドル賞、第12回日本歌謡大賞・放送音楽賞に輝きました。

作詞・作曲は、  松本隆、大瀧詠一です。

小泉今日子の「木枯しに抱かれて」は、1986年11月にリリースされ、小泉今日子の20枚目のシングルです。

それまでの明るい曲とは一線を画した、小泉今日子の新境地を示す代表作になりました。

小泉今日子が主演の東映映画『ボクの女に手を出すな』の主題歌になっています。

作詞・作曲は、THE ALFEEの高見沢俊彦です。

題名のない音楽会 昭和のポップスの“秋の名曲”をアレンジするクラシックの巨匠は誰?

番組では、もしも、クラシックの巨匠が、昭和ポップスをアレンジしたら?をテーマに協奏曲を作りあげるという、壮大なチャレンジがされました!

まず、協奏曲とは、ソリストとオーケストラが合奏する曲で、多くは3楽章で構成されています。

今回は、秋のイメージとして、もの悲しい、切ない曲調が感じられる曲を、昭和ポップスから選曲して、『秋の協奏曲』を作曲しています。

選曲された昭和ポップスは、山口百恵の『秋桜(コスモス)』、松田聖子の『風立ちぬ』、小泉今日子の『木枯しに抱かれて』の3曲でした。

この3曲をどう構成していくのかとわくわくしていると、1楽章ずつ作曲家も変えての編曲がされている贅沢さでした。

秋の協奏曲イメージ楽曲作 風
第一楽章山口百恵『秋桜(コスモス)』S.ラフマニノフ
第二楽章松田聖子『風立ちぬ』C:ドビュッシー
第三楽章小泉今日子『木枯しに抱かれて』W.A.モーツアルト



題名のない音楽会 山口百恵『秋桜(コスモス)』を宮田大(チェリスト)が熱演!

なぜ、第一楽章は、山口百恵『秋桜(コスモス)』なのでしょうか?

まず、第一楽章とは、曲の「主人公」を紹介する大事な楽章であり、曲全体の、イメージ、香り、雰囲気、アイデアなどを紹介する役目があります。

秋をイメージに、山口百恵の低音の声の響きの美しいこの曲が選曲されました。

そして、この曲が短調(一般的に暗い響きのする曲)の旋律のために、短調のメロディーで協奏曲を書いた唯一のS.ラフマニノフが作曲家として選ばれていました。

S.ラフマニノフ(1873~1943)は、浅田真央がソチオリンピックで使った「ピアノ協奏曲第2番」を始め、「交響曲第2番」などで人気の高い、ロシアを代表する作曲家です。

指揮者の原田慶太楼は、S.ラフマニノフは、短調でロマンチックな切なさを伝えるのが、とても上手な作曲家だと言っていました。

確かに!ラフマニノフが好きな日本人は多いって聞きます。演歌にも通ずるのか、この暗めの迫力あるロマンチックさが魅力的ですよね。

だから、『秋桜(コスモス)』のイメージが、ラフマニノフにぴったりなのですね。

第一楽章のソリストは、歌い上げるチェロが得意の宮田大です。

宮田は、「ラフマニノフとコスモスの良さがどちらも出ていて、本当に協奏曲の名のとおり、協力し合っている感じがしました」と語っていました。

宮田 大(チェリスト)
ロストロポーヴィチ国際チェロコンクール優勝 第20回出光音楽賞受賞

『秋桜(コスモス)』を作詞作曲した、さだまさしは、秋の協奏曲第一楽章を聞いて、こんなコメントしていました。

「ラフマニノフは意外。そんなことは意識していなかったけれど、この曲は、ロシア的なのかなと思ったりしました。(秋の協奏曲が)カウンターメロディー(対旋律)になっていることに、不思議な面白さを作り手として感じました。期待していましたけれど、見事でした。感激しました」

カウンターメロディー(対旋律):主旋律を効果的に補う別のメロディ

それぞれが掛け合っていた時に、演奏していた主な曲の組合せです。

チェロオーケストラ
『秋桜(コスモス)』ラフマニノフ 『ヴォカリーズ』
(オーボエ首席奏者 荒絵理子)
ラフマニノフ 『ヴォカリーズ』『秋桜(コスモス』)
(クラリネット首席奏者 吉野亜希菜)
『グレゴリオ聖歌“怒りの日”』
*ラフマニノフが好んで用いた楽曲
『秋桜(コスモス』)
(フルート 八木瑛子)
     チェロのカデンツァ

チェロとオーケストラが、交互に『秋桜(コスモス)』とラフマニノフの曲を演奏し合い、メロディーが響き合う、聴かせる第一楽章でした。


題名のない音楽会 松田聖子『風立ちぬ』を藤原道三(尺八)が聴かせます!

そして、第二楽章は、松田聖子『風立ちぬ』です。

第二楽章は、ロマンスが起こる楽章。

この曲は、歌詞に、すみれ、ひまわり、フリージアなどカラフルな言葉が登場し、ロマンスを感じさせる明るい曲調です。

モノクロな第一楽章から、色を与えた第二楽章に進めていく展開にするために、選曲されました。

では、作曲家は誰でしょう?
オーケストラのサウンドを使って、カラフルな色彩を与え、色彩感溢れるハーモニーを作ることに長けているのは、C:ドビュッシーをおいて他にはいません。

C:ドビュッシー(1862-1918)は、「亜麻色の髪のおとめ」「月の光」「海」など繊細で抒情的な楽曲を多く残したフランスの作曲家です。

第二楽章のソリストは、色を加えるところから、尺八の第一人者の藤原道山です。

指揮者の原田は、「ドビュッシーは東洋の情緒を追求した作曲家なので、漂うような雰囲気は尺八にぴったり」と言います。

藤原道三は、「『風立ちぬ』と。ドビュッシーが全く結びつかなかった。だけどそこが非常に楽しみでしたね」と語っています。

藤原道三 都山流大師範
「スーパー歌舞伎Ⅱ」(4代目市川猿之助主演)の音楽担当。ウィーン・フィルメンバーやケニー・Gとの共演など多岐にわたり活躍

 

尺八オーケストラ
『風たちぬ』ドビュッシー風ハーモニーにのせて演奏
ドビュッシー『月の光』
(ヴィオラ首席奏者 青木篤子)
ドビュッシー「2つのアラベスク」
(ハープ首席奏者 景山梨乃)
ドビュッシー『亜麻色の髪のおとめ』
    尺八のカデンツィア

演奏後、藤原道三は、「いや、ドビュッシーでしたね。響きがまさに」と語っていました。

石丸幹二は、「『風立ちぬ』の曲のコードの中に、ドビュッシーの別のコードが入ってきて、その違和感がいつしか心地よくなってくる感じがします」と言っていました。

コード(和音):2つ以上の音にハーモニー

私には、尺八がソリストなのが意外でしたが、ハープとのかけ合いや、オーケストラとの水面を漂うようなメロティーのやり取りが幻想的で、美しい調べにうっとりしました。

題名のない音楽会 小泉今日子『木枯しに抱かれて』を南紫音(ヴァイオリニスト)が感情をほとばしらせて演奏!

第三楽章は、小泉今日子の『木枯しに抱かれて』です。

第三楽章は、(主人公が)前向きに未来へ進む楽章。

フィナーレにふさわしい華やかさの中に、疾走感のある悲しみを入れた曲調にしています。

小泉今日子の『木枯らしに抱かれて』は、失恋をして、でも前向きに前進していくんだという歌詞が『秋の協奏曲』のフィナーレにピッタリと選曲しました。

そして、組み合わせるクラッシックの作曲家は、W.A.モーツアルト。

明るい華やかな曲が多いモーツアルトですが、今回は、短調の曲を合わせます。

華やかながらも短調の疾走する悲しみを繊細に表現するW.A.モーツアルトが選ばれました。

やっぱり、最後は天才モーツアルトで締めるんですね。

W.A.モーツアルト(1756-1791)は、幼少時より神童として知られ、「魔的」を始めオペラや交響曲、ピアノ曲などに傑作を残した有名なオーストリアの天才作曲家です。

第三楽章のソリストは、華やかな音色で活躍する南紫音(ヴァイオリニスト)です。

南紫音(ヴァイオリニスト)
ロン=ティボー国際音楽コンクール第2位。第21回出光音楽賞 受賞

この曲を演奏した南紫音は、こう言っていました。
「もの悲しさとは、心の中に秘めたというイメージだったが、とても心の中ではおさまらない衝撃のクライマックスでした」

『木枯らしに抱かれて』の作詞作曲のTHE ALFEEの高見沢俊彦は、この曲を聴いて、こう言っています。
「ものすごくよくなりました。こんなにいい曲だったっけと思いました。短調の曲なので、第三楽章を華やかにするのは難しいのではと思っていましたが、感情がほとばしるソロ演奏に感動しました」

ヴァイオリンオーケストラ
『木枯らしに抱かれて』モーツアルト「交響曲40番」
(フルート 八木瑛子)
モーツアルト「交響曲40番」『木枯らしに抱かれて』
(オーボエ首席奏者 荒絵理子)
モーツアルト「ピアノ協奏曲24番」
モーツアルト「交響曲25番」
   ヴァイオリン カデンツィア

モーツアルトの曲をベースに、『木枯らしに抱かれて』の旋律が美しく重ねられて、迫力ある演奏に感動しました。


題名のない音楽会 「昭和ポップス!“ニッポンの秋”協奏曲の音楽会」を観て

いや、驚きました。素晴らしい!!そして楽しい!!

クラシック音楽の迫力そのままに、聞き覚えのある旋律が美しく重ねられて、感動が何倍にも押し寄せてくる感じがしました。

これってあり!ですね。

他の昭和ポップスでもきっとできるのだと思います。

また、是非聴きたい企画でした。

楽曲紹介

♪1:もしもラフマニノフが山口百恵の「秋桜」を作ったら?
作曲: さだまさし
編曲: 萩森英明
チェロ: 宮田大
指揮: 原田慶太楼
演奏: 東京交響楽団

♪2:もしもドビュッシーが松田聖子の「風立ちぬ」を作ったら?
作曲: 大瀧詠一
編曲: 萩森英明
尺八: 藤原道山
指揮: 原田慶太楼
演奏: 東京交響楽団

♪3:もしもモーツァルトが小泉今日子の「木枯しに抱かれて」を作ったら?
作曲: 高見沢俊彦
編曲: 萩森英明
ヴァイオリン: 南紫音
指揮: 原田慶太楼
演奏: 東京交響楽団
(出典:tv asahi 題名のない音楽会 オフィシャルサイト)

偉人たちが残した言葉

 音楽とは詩の姉妹であり、その母親は悲しみだ。
~S.ラフマニノフ~
(出典:tv asahi 題名のない音楽会 オフィシャルサイト)



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